テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

日本はなぜかエリートが嫌い、育てようともしない

良質なリーダーをどう育てるか(1)日本の官僚と現実の問題点

齋藤健
衆議院議員
情報・テキスト
 国力の原点は人材であり、良質なリーダーをどう育てるかは、国家として重要なテーマである。かつて日本は優秀な人材を政府が抱える、世界でも有数の国だったが、現在はどうなっているのか。この問題について、齋藤健氏が日本の実情を語る。(前編)
時間:06:14
収録日:2014/02/18
追加日:2014/05/29
カテゴリー:
≪全文≫

●官僚パッシングによって採用から崩れてしまった官僚組織


―― 通産省は、齋藤さんが昔、通産省の役人だった頃のほうが、遥かに自由度があったのではないですか。

齋藤 ありましたね。

―― 今は相当まずそうですよね。

齋藤 まずいですね。まだ、今の局長クラスぐらいまでは踏みとどまって、頑張っていますが、あと10年経ったらどうなるのか。

―― ガタガタでしょう。だって、人間というのは、積み重ねですから、30代の頃にそういうことをしていなかったら、40代でそうなるわけがないですから。

齋藤 おっしゃる通りです。

―― そこがぽこっと抜けていると。おそらく、かろうじて支えていたのは、大蔵省や通産省の一部の人たちの中に、自由にものを発想する力と、どこでもヒョコヒョコ出て行くという行動力がまだあったからで、そういうものが失われてから、多分10数年は経っているでしょう。

齋藤 経っていますね。

―― そうすると、ここの部分が使えなくなってきて、今50代前半くらいの局長さんたちがいなくなった頃に、本当の人材というのは払底するではないですか。

齋藤 それは感じています。官僚バッシングが1990年代後半から、非常にきつくなりました。バッシングがきつくなったのは当然で、こちらの側にもおかしなところがありました。学生というのは非常にピュアですから、メディアによって、天下り先を探すのに汲々とし、ノーパンしゃぶしゃぶに通い、上から目線でいつもものを言う人たちというイメージがつくと、まともで正義感の強い人ほど、「そんなところへは行きたくない」ということになるわけです。だから、採用から崩れてしまったのです。

 しかし、そういった官僚はほんの一部の人です。本当に意気に感じて、自分を犠牲にしながらも、国のためとやっていると思って働いている人はいっぱいいます。

 けれども、そういう情報は、メディアでは流れない。そうすると、メディアの情報にしか接していない学生は、そんなところには行かないというようになるわけです。だから、まず採用から崩れてきたのです。

―― なるほど。そこは、致命傷になりますね。

齋藤 採用が崩れてきたということは、組織の人材能力を決定する要因として、致命的に大きいです。

―― 霞が関というのは、人材しかいないところですし、それ以外何にもないわけですから。

齋藤 10数年から20年は崩れてきています。だから、そろそろ危ないですよ。

―― 40代。

齋藤 40代。

―― きていますね。

齋藤 もうきています。


●かつて日本ほど優秀な人材を政府の職員として抱えた国はなかった


―― そうすると、次のリーダーを作っておかないと。

齋藤 いろいろなことを感じますが、やはりしっかりした官僚は必要です。

 私は、自分で日米交渉をしている時に感じましたが、例えば、日本はWTO(世界貿易機関)でアメリカを訴えたとき、日米どちらの主張が国際法上正しいかということで、2日間議論を激突させたことがありました。

 その時、オーストラリアとEUがオブザーバーで入りました。USTR(アメリカ合衆国通商代表部)と通産省の役人同士、2日間バトルを繰り広げて、終わった後に傍聴していたオーストラリアの人がこっそり私に言ったのは、「アメリカと日本ではレベルが違いすぎる。日本のほうが遥かに上だ」と。つまり、日本は、そういうものを持っているわけです。

 ただし、役人というのは、どうしても視野が狭くなるし、弱い人の気持ちが分からない。私は、3年4カ月浪人をし、いろいろなものを見て、自分の見ていた世界というものがどれほど狭く、ある意味一方的な見方をしていたか、という経験をしました。しかし、役人というのは、普通そういった経験をしていないですから、その傾向はありますが、一方で、世界の政府の職員の中で、これほど優秀な人を集められる国というのもそうはないのです。フランスとか、シンガポールとか、一部の国はあります。中国も、ある意味偏っているかもしれませんが、エリート教育をしています。しかし、日本ほど優秀な人材を政府の職員として抱えられているというのは、そうはありません。


●エリートは嫌われているため、優秀な人材を育てようともしない


―― 間違いないですね。

齋藤 間違いないです。それが崩れてきているということは、国力の原点につながる問題ですし、悪いところがあれば、それを直しながらやっていけばいい。全体をつぶそうなどということは、日本にとっていいとはとても思えないのです。

 でも、それを言うと「齋藤さん、票を失うから言わないほうがいいよ」と、地元の人たちに言われるわけです。官僚というのは、そこまで嫌われているから、「官僚を擁護するようなことを言うと票が減るよ」と。...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。