GDP統計から読み取る日本経済の課題
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
企業は「投資をしなければ生き残れない」と考えるべき
GDP統計から読み取る日本経済の課題(2)企業の貯蓄と投資
伊藤元重(東京大学名誉教授)
学習院大学国際社会科学部教授の伊藤元重氏がGDP統計の数字から、日本経済、財政の課題を読み取り、解決への道を論じる。今回、注目したのは企業部門の貯蓄投資差額だ。GDP比5.1パーセントと、アメリカ、ドイツと比しても格段に高いこの数字が、日本経済の問題点を浮き彫りにする。(全2話中第2話)
時間:15分06秒
収録日:2017年7月25日
追加日:2017年9月4日
カテゴリー:
≪全文≫

●GDP統計で目をひく企業部門の貯蓄投資差額


 (前回のレクチャーで)、データを見て改めて考えさせられることがあるというお話をしたのですが、そのデータで私が最近いろいろと考えさせられることになったのが、GDP統計、特にSNAデータの部門別の貯蓄投資差額なのです。家計部門、企業部門、政府部門、そして海外部門で、日本はどれくらいの貯蓄余剰を持っているかをGDPで割った数字です。前回申し上げたのは政府部門で出てくる貯蓄投資差額で、それは実は政府の財政赤字を表しているということでした。もちろん、GDP比で3.5パーセントくらいですから非常に大きいのですが、ただ、アメリカ、イギリスに比べてそれほど高いわけではなく、これはなぜなのかという話を前回しました。

 そこで今回ですが、もう1つ目を引くものとして、企業部門の貯蓄投資差額を取り上げます。簡単にいうと、企業が利益をあげることでどれだけ貯蓄資金を取り込んでいるかというところから、どれだけ投資に回しているか、その残りの部分が貯蓄投資差額として出てくるわけです。アメリカにおける2015年の貯蓄投資バランスを企業部門について見ると、もっともその前後もあまり変わりはないのですが、0.9パーセントです。ドイツは2.5パーセントくらいです。ドイツは今、ご存じのように経済が非常に好調ですし、企業は非常に健全で、ある意味健全すぎるくらいの運営をしているということで、毎年GDP比2.5パーセントの貯蓄余剰があるという状態です。


●米独に比べて圧倒的に多い日本企業の資金余剰


 一方、日本は5.1パーセントです。ですから、グラフに書いてみると皆さんも感じると思うのですが、何かすごく変なことが日本で起こっているのではないかという状況なのです。世界的に、企業には資金余剰があると言われているので、日本もそういうことだとは言えますが、それにしてもアメリカやドイツに比べて、日本の5.1パーセントはいかにも多いのです。

 単純な数字として仮に日本のGDPを500兆円―実際にはもう少し多いのですが―とすると500兆円の5.1パーセントで約25兆円の余剰資金が、2015年だけでも企業に貯まっているということです。2014年も2016年も、多分同じように貯まっているでしょうから、毎年25兆円規模のお金が資金余剰として、企業に貯まってきているのです。企業の方とお話をすると、「いやぁ、うちのところにはそんなにお金は入っ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
逆境に対峙する哲学(7)試練と祟りと弱さの力
モンテーニュの告白「学が邪魔をすることがある」と百姓の力
津崎良典
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
「進化」への誤解…本当は何か?(2)「進化論」対「創造論」
「進化論」対「創造論」…アリストテレスの目的論とは?
長谷川眞理子
新しい循環文明への道(1)採掘文明から循環文明へ
2026年頭所感~循環文明の「三つの柱」…いよいよ実現へ
小宮山宏
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ