2017年総選挙の結果とその見方
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
2017年衆議院選挙で小池百合子がハマった制度の罠
2017年総選挙の結果とその見方
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
政治学者で慶應義塾大学大学院教授の曽根泰教氏が、2017年総選挙の結果を総括する。立憲民主党が希望の党よりも多くの支持を得ると同時に、自公は野党対立で漁夫の利を得た。希望の党失速の理由は、小池氏が「制度の罠」にはまったからだと曽根氏は言う。いったいどういうことなのか。
時間:9分52秒
収録日:2017年10月23日
追加日:2017年10月23日
カテゴリー:
≪全文≫

●野党同士の対立で自公は漁夫の利を得た


 今日は、2017年総選挙の結果についてお話しします。ご承知のように、自由民主党・公明党(自公)で3分の2議席という結果に終わり、解散前と何も変わらないのではないかという印象をお持ちの方もいるでしょう。また、野党再編は進んだのかと疑問に思われる方、あるいは、今後の政策がどの方向へ向かっていくのか知りたい方もいるでしょう。

 まずは、選挙を概観しましょう。この選挙は、安倍晋三首相が自ら勝てる時期を探って行った、奇襲攻撃でした。これに対して、小池百合子氏は一夜城を造ったわけです。一夜城ですから、政策は当然、多くのものが書き割りでした。他方、民進党は希望の党の立党に合わせて、計画倒産をしました。

 ところが、計画倒産をして従業員を引き取ってもらおうと思ったところ、全員は無理だとはねのけられてしまったのです。スクリーニングされるのであれば、自主再建しようということで、自主再建組が立憲民主党を結成します。結果的には、希望の党よりも立憲民主党の方が議席を多く獲得し、かつ、野党同士の対立で自公は漁夫の利を得ることになりました。結論をいえば、こういう選挙だったと思います。


●小池氏は「制度の罠」にはまった


 しかし、なぜ小池氏の希望の党は失速してしまったのでしょうか。小池氏の「排除」の論理についての失言が大きかったとは、よく言われることです。確かに、これはその通りでしょう。しかし、小池氏は「制度の罠」にはまったのだと私は考えています。

 「制度の罠」として、しばしば挙げられるのは、総理大臣は国会議員でなければならないという憲法上の既定です。都知事と国会議員を両方兼ねるわけにはいきませんので、総理大臣を目指すのであれば、今回の衆議院議員選挙に出て、国会議員になっておく必要がありました。ここまでは、多くの評論家や新聞などが指摘することです。

 しかし、もう一つ「制度の罠」があります。それは、現在の日本の選挙は、事前型の政権選択選挙だということです。日本新党が結成された頃はまだ中選挙区制で、首相候補は選挙後に相談して決めるというスタイルでも、国民は十分納得することができたのです。しかし、当時と今の選挙は違います。小選挙区制になったということだけではありません。選挙自体が、政権選択選挙になっているのです。この点は例えばドイツとは異...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(2)図書館「レファレンス」の活用
図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」
中村彰彦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
東洋の叡智に学ぶ経営の真髄(5)徳は孤ならず
敬天愛人…一人ひとりを大切にしながら宇宙を相手に生きる
田口佳史
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司