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松下幸之助さんとの最初のコンタクトは、松下政経塾1期生の最終面接のときです。もちろんお名前は存じ上げておりましたし、本も読んでいましたが、85歳のまさに経営の神様を前にして面談を受けること自体、相当プレッシャーだったのです。そんな中、笑顔で迎えていただいたのですが、目は笑っておらず、射抜くような鋭い目の笑顔なのです。耳は大きく、相手側のほうにピーンと立ち、一言も聞き漏らさないぞという機能的な耳ですから、面談では、ほとんど吸い込まれるように、自分が考えた、整理したことが出ていくような感じがしました。ああいう方には会ったことがないですね。
先ほど物事を進めるとか、合意形成を図る政治というのは、結局一対一だと言いましたが、ああいう一方的に吸い込まれていくような大きな人物というのは、その後、いろいろな世界のすごい人ともたくさん会っていますが、松下幸之助さんがずばぬけてすごかったなと思います。
また、首脳外交とか、いろいろな政治家との一騎打ちもやりましたが、松下さんに比べればそれほどでもないというのが、率直なところです。


