アベノミクス5年間の成果と課題
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
経済活性化のポイント「賃金」が上がらない理由とは?
アベノミクス5年間の成果と課題
伊藤元重(東京大学名誉教授)
東京大学名誉教授で学習院大学国際社会科学部教授の伊藤元重氏が2012年から始まったアベノミクス5年間を総括し、その成果と課題、今後の方向性について論じる。厳しい意見も多いアベノミクスだが、伊藤氏は名目GDP、財政赤字の縮小、雇用改善、高い企業収益など複数の評価すべき点を挙げる。では、なぜ物価、賃金は上がらないのか。成長率が鈍化しているのはどうしてなのか。先進国が抱える構造問題にも言及しつつ解説する。
時間:15分40秒
収録日:2017年11月27日
追加日:2017年12月28日
カテゴリー:
≪全文≫

●アベノミクスの成果に対する厳しい評価-二つの原因

 
 2017年年末をもって安倍内閣発足からちょうど5年、つまりアベノミクスによる5年が経過したということになります。これまでの成果や課題、またこれからの方向を考えるのに非常にいいタイミングだと思います。

 一般的に見ると、アベノミクスの成果に対してなかなか厳しい意見も多いように理解しています。特にその原因と思われるものが二つあります。一つはデフレ脱却についてです。アベノミクスでは、とにかくデフレから脱却するということを前面に出しました。とりわけ日銀総裁に就任した黒田東彦氏は、2013年4月の段階で「2年以内にインフレ率を2パーセントにもっていく」という目標を立てたわけですが、5年たってみると物価も賃金もなかなか上がっていません。そういう意味ではアベノミクスの一番の目標であったデフレ脱却という成果が出たとは言いにくい面があります。

 もう一つは、日本の潜在成長率です。これは経済成長のトレンドのようなものですが、この潜在成長率がなかなか上がっていかない、ということにあります。アベノミクスはやはり成長戦略を前面に出したわけですから、潜在成長率が上がっていないということで、ある種の閉塞感があるのです。

 このように、物価、賃金が上がりにくい、そして潜在成長率が上がっていないという、アベノミクスに対する厳しい見方があるのです。


●最も注目すべき成果は名目GDPの回復


 ただ、これ以外の数字でみると、いろいろな成果が出ていると思います。

 物価、賃金がなぜ上がらないのか、あるいは成長率がなぜ上がらないのか、ということについては改めて議論する必要があると思いますが、それ以外のところで、一番注目すべきなのは、名目GDP(国内総生産)の数字です。これは経済の規模感を見る上で非常にいいのですが、1997年に532兆円前後の水準を記録してから、実はそれから15年間、日本の名目GDPは低い数字になってしまったのです。1997年、98年あたりで金融危機があり、経済は非常に混乱し、そのあとデフレも起きてGDPはずっと下がっていきました。

 小泉内閣の途中から、日本のGDPは増え始めて回復基調に向かうのですが、97年の水準に戻る前、2008年にリーマンショックが起こったことで、日本の名目GDPは下がっていきました。また、2011年に起こった東日本大震災の影響で、さらに下がり...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
トランプ政権と過激化した米国…MAGA内戦、DSAの台頭
東秀敏
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
トランプの誤謬…米国製造業を壊した犯人は米国の経営者
島田晴雄
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
これから必要な人材と人材教育とは?(3)無謬性とジョブローテーション
もうゼネラリストを育てる人事制度では時代に対応できない
柳川範之
プロジェクトマネジメントの基本(10)大脳生理学によるモチベーション理論
論理的?計画的?社交的?冒険的?利き脳による4タイプ
大塚有希子
おもしろき『法華経』の世界(10)未来への智慧と希望
「未来応化=どんな未来も大丈夫」…ブレない臨機応変の力
鎌田東二
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
逆境に対峙する哲学(9)先人の知恵という友
本居宣長も白隠もハイデガーも友となる――大切なのは?
津崎良典
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
今井むつみ
聖徳太子「十七条憲法」を読む(1)十七条憲法を学ぶ現代的意義
聖徳太子の「和」は議論の重視…中華帝国への独立の気概
賴住光子
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(6)曼荼羅の世界と未来のネットワーク
命は光なのだ…曼荼羅を読み解いて見えてくる空海のすごさ
鎌田東二