2018年頭所感
2018年は人間の生き方に関わる変化がより明確になる
2018年頭所感(2)人間の生き方の大きな変化
科学と技術
小宮山宏(東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツ・アカデミー座長)
2018年には、人間の生き方の本質に関わる大きな変化がいっそう明確になるだろう。サイボウズやアイエスエフネットなど、IT企業の先進的な雇用形態は、日本社会全体の働き方改革にとって参考になる。東京大学第28代総長で株式会社三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏が、2018年に予見される社会の大きな変化について解説する。(全2話中第2話)
時間:9分17秒
収録日:2017年12月21日
追加日:2018年1月1日
収録日:2017年12月21日
追加日:2018年1月1日
≪全文≫
●2018年は人間の生き方と関係する変化が明らかになる
改めて、明けましておめでとうございます。2018年はどのような年になるでしょうか。私は大きな変動の年になるのではないかと考えています。その変動は、例えば北朝鮮問題がどうなるのかということではありません。むしろ私が言いたいのは、社会が大きく変化していくという根本的な変動です。2018年は、こうした変動が明確になってくるのではないかという気がしているのです。
2017年には働き方改革が非常に議論されました。その際に、例えば残業時間の上限が問題になっていたわけですが、2018年にはそれだけではなく、人間の生き方と関係する、もっと本質的な変化が誰の目にも明らかになってくるでしょう。
●IT企業では新しい働き方につながる雇用形態が始まっている
その変化を先進的に表現しているのが、いくつかのIT企業です。IT企業は仕事が増えていますから、人の取り合いになっている状況です。そうした企業では、必要に応じて人々の新しい働き方につながるような採用・雇用形態が、もうすでに始まっています。サイボウズやアイエスエフネットのような会社が典型でしょう。
例えばサイボウズでは、いわば一人一業務規程といったことを実施しています。この会社は5年ほど前に人がどんどん辞めていき、平均の転出率が30パーセントを超えました。つまり、入社から3年たつとその人はいなくなるというような状況です。これでは会社が成り立ちません。
そこで社長は、離職者を引き留めるため、なぜ人が辞めていくのか原因を聞き取り調査しました。そうしたところ、辞める理由は人によって全て違っていたことが分かったのです。親の介護が必要になった、副業を希望している、週4日で働きたい、赤ちゃんが生まれたというように、人によって辞める理由がさまざまだったのです。
そこで社長は、それぞれの要求に応じることにしました。例えば、週3日で働きたいのであれば、それでも構わない。親の介護をするのであれば、会社に来るのは2日で残りは在宅勤務でもいい。赤ちゃんが生まれたのなら、育児しながら1時間あるいは2時間の在宅勤務で続けてもいい。ということで、さまざまな要求を全て受け入れたわけです。その結果、離職率は3年間続けて5パーセントを割り、業績はこの5年間ほどで急上昇しているといいます。
また、アイエスエフネットの社...
●2018年は人間の生き方と関係する変化が明らかになる
改めて、明けましておめでとうございます。2018年はどのような年になるでしょうか。私は大きな変動の年になるのではないかと考えています。その変動は、例えば北朝鮮問題がどうなるのかということではありません。むしろ私が言いたいのは、社会が大きく変化していくという根本的な変動です。2018年は、こうした変動が明確になってくるのではないかという気がしているのです。
2017年には働き方改革が非常に議論されました。その際に、例えば残業時間の上限が問題になっていたわけですが、2018年にはそれだけではなく、人間の生き方と関係する、もっと本質的な変化が誰の目にも明らかになってくるでしょう。
●IT企業では新しい働き方につながる雇用形態が始まっている
その変化を先進的に表現しているのが、いくつかのIT企業です。IT企業は仕事が増えていますから、人の取り合いになっている状況です。そうした企業では、必要に応じて人々の新しい働き方につながるような採用・雇用形態が、もうすでに始まっています。サイボウズやアイエスエフネットのような会社が典型でしょう。
例えばサイボウズでは、いわば一人一業務規程といったことを実施しています。この会社は5年ほど前に人がどんどん辞めていき、平均の転出率が30パーセントを超えました。つまり、入社から3年たつとその人はいなくなるというような状況です。これでは会社が成り立ちません。
そこで社長は、離職者を引き留めるため、なぜ人が辞めていくのか原因を聞き取り調査しました。そうしたところ、辞める理由は人によって全て違っていたことが分かったのです。親の介護が必要になった、副業を希望している、週4日で働きたい、赤ちゃんが生まれたというように、人によって辞める理由がさまざまだったのです。
そこで社長は、それぞれの要求に応じることにしました。例えば、週3日で働きたいのであれば、それでも構わない。親の介護をするのであれば、会社に来るのは2日で残りは在宅勤務でもいい。赤ちゃんが生まれたのなら、育児しながら1時間あるいは2時間の在宅勤務で続けてもいい。ということで、さまざまな要求を全て受け入れたわけです。その結果、離職率は3年間続けて5パーセントを割り、業績はこの5年間ほどで急上昇しているといいます。
また、アイエスエフネットの社...
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