●地球という生存の基盤に影響を与えるようになった人間の活動
例えば、地球環境でいえば、産業革命以前280ppmだった二酸化炭素の濃度が、もうすぐ400ppmまで増えるというところまできています。それに応じて0.8℃当時よりも高くなっている。これは人間の活動が地球という生存の基盤そのものに影響を与えるくらい大きなものになってきたということです。これは一つの大きな人類史上の節目です。
●産業革命が引き起こした豊かさの格差
もう一つは、この図を見て頂きましょう。この図は主要な国の一人当たりのGDPを、その時その時の世界平均のGDPで割った値です。ですから、千年前、みんなが1の近辺にいるというのは、どの国も豊かさにほとんど差が無かったということです。
これは、実態はどういうことかというと、ほとんど産業というのは農業だったということです。ほとんど食べるためにみな活動していた。一人当たりの食べる量はそんなに変わりませんから、どの国も豊かさにそんなに差がなかった。
それが急激に開きだす、豊かな国と豊かでない国が出てくるというのは、産業革命です。産業革命をやった国が生産性を非常に上げて、豊かになっていったわけです。この豊かになっていった国が先進国になっていったわけです。これはイギリスに始まり、当時のヨーロッパ、分身ともいえる北米、カナダ、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、それに少し遅れて日本ですね。これらの国が産業革命をやることによって先進国になっていったわけです。
一方、生産性の上がらない、昔のままであったほとんどの国が植民地あるいは植民地同然の状況になっていったわけです。アフリカはほとんど植民地ですし、南アメリカ大陸もそうです。アジアもほとんどの国が植民地あるいは植民地同様の状況となっていったわけです。
この図で見て分かるように、一番先進国と植民地、途上国との間で、所得の開いた時というのは、この辺りが4で一番低い所が0.1くらいですから、40倍くらい一人当たりの豊かさの差ができていったわけです。
●近づきつつある産業革命の飽和
一方で、ここ最近10年~20年をみてみると、急激に先進国の値が落ち込んでいます。これは先進国が貧しくなってきたわけでは決してない。ゆっくりした成長ですが1パーセント程度の成長を続けているわけですが、世界平均が上がってきたのです。ここに示してあるのは中国とインドだけですが、世界の平均が急に上がってきた。それによって先進国と途上国の間が急速に縮まってきている。ここをいま僕らは、生きているわけです。
つまり、千年前、非常に貧しい、食べるのにギリギリという状況で均一だった貧富の差がなかった国々が、非常に大きく数十倍の豊かさの差が生まれた。それが、ここ10~20年、再び物質的に豊かなレベルで接近しつつあるというところを生きているわけです。
なぜ接近しつつあるのでしょうか。これは勿論途上国が豊かになってきたということですが、なぜかというと、途上国が産業革命をやっているからです。工業化を進めているわけです。つまり、有限の地球の中で産業革命、工業化がほぼ飽和に近づきつつあるという時代、非常に特殊な時代を我々は生きているといえます。
●人工物の飽和
次に、この表を見て頂きましょう。それでは、産業革命が起きた結果、何が今起こっているかということを自動車で見た例です。一体、一人あたり何台自動車を持っているか、この右の数値が現在各国で走っている自動車の数を人口で割った値です。つまり、0.5というのは二人に1台、その国で自動車を持っているという意味です。ですから先進国というのは国によらず二人に1台くらい、自動車を持っている状況ができて、人口はほとんど変っていませんから、車の数が飽和の状態になっているわけです。日本でしたら5,800万台。この数というのは10年前も20年前も殆ど変わってないわけです。今後も恐らくそんなに変わらない。というのがこの飽和という状況です。
では一体、1年に何台車が売れるのだろう。これは廃車した分だけ新車が売れるという状況です。そうすると12年で新車が廃車になりますので、5,800万台÷12年=480万台、これが日本の一年間に売れる車の数ということで、エコカー減税をやると増えるとか、不景気になると減るとか、そういう変動はあるのですが、ほぼここで一定。つまり、これが日米欧、先進国どこも同様に苦しむ内需の飽和、内需の不足ということの本質的な原因です。なぜならば、パソコンにしても冷蔵庫にしてもすべて自動車と同じ...