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永続権力が狙い?…ロシア大統領選挙は2024年が重要

イタリアとロシアの選挙から両国の政治を読み解く

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授
情報・テキスト
2018年3月に行われたイタリアの総選挙とロシアの大統領選挙から、政治学者で慶應義塾大学名誉教授の曽根泰教氏が、両国の政治を読み解く。イタリア総選挙の結果からは過半数形成の難しさという課題と反EUの流れの継続が、またロシア大統領選挙からは次回の2024年選挙に向けたプーチンの権力の永続化への意図が、それぞれ読み取れる。
時間:08:39
収録日:2018/03/14
追加日:2018/04/20
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≪全文≫

●イタリア総選挙での過半数形成の難しさと選挙制度改革の必要性


 2018年3月4日、イタリアの総選挙が行われました。イタリアの場合、ほぼ毎回、上下両院で同時に選挙が行われます。今回は、その選挙結果を見て一体何が言えるのかということをお話ししたいのですが、一言でいうと選挙結果だけでは明確な結論は出ませんでした。なぜ明確な結論が出なかったかというと、結果的にはハング・パーラメント(hung parliament)になったからです。つまり、過半数を取る政党がいなかったので、これから連立交渉をせざるを得ないからです。確かに、中道右派の方が勝ったことは勝ちました。ただ、過半数を取ることはできませんでした。それから五つ星運動も、これも勝利したとは言えるのですが、中道右派と今後一緒にやるのかは分かりません。一つ明確だったのは、中道左派が破れたということです。

 こうしてみると、前から申し上げているように、イタリアはまたしても、選挙で決着をつけることができなかったわけです。どこかが勝利せざるを得ない状況を作ろうと、過半数を取れるようにエクストラの議席を与える選挙制度など、いままでイタリアはいろいろなことをやってきました。その中でも、以前テンミニッツTVでお話しした、マッテオ・レンツィ首相の時に行われた憲法改正は、かなりまともだし整理されていました。あの改革は、政権を問う形で国民投票をしたために、政府あるいは現政権への不満が反対票になってしまい、頓挫してしまいました。この経緯から今回の選挙結果を考えると、イタリアでは今後ますます選挙制度の改革が必要になるということが言えます。


●反EUの流れの継続と不安定なイタリア政治


 もう一つこの選挙結果から言えるのは、反EUの流れがまだ終わっていないということです。これまで、フランスのエマニュエル・マクロン氏の勝利によって、反EUの流れは食い止められたと言われてきました。しかし、中道右派連合に加わった同盟、あるいは五つ星運動などは、EUに対して距離を置く政党です。そこで、EUに関して楽観視できないというのが、今回の選挙の一つの結論でした。

 そうすると、イタリアの不安定さは当分続くことになります。イタリアは、経済運営や政治運営をかなり厳しい状況の下で行ってきたのですが、政権を発足させるにはどうしたらいいのかが、今回の選挙の結果ではよく見えてきませんでした。それが見えるようになるには、これから何カ月かたつかもしれませんし、あるいはすぐに次の姿が見えるかもしれません。

 そういう意味で、今回のイタリアの総選挙については、ヨーロッパ全体の流れで見れば反EUがまだ残っているという結論を出せるのですが、イタリア政治はどうしたらいいのか、どこへ向かうのか、その結論は見えなかったと言えます。


●ロシア大統領選挙~問題は2018年の選挙ではなく2024年の選挙~


 ロシアの選挙が2018年3月18日に行われます。大統領選挙において、ウラジミール・プーチン氏は圧勝するのではないかと言われています。しかしながら、ロシア政治を見ている人たちにいろいろと聞いてみますと、問題は今回の選挙ではなく、2024年であるということがよく言われます。というのは、ロシアの大統領は任期が6年ですので、2018年にプーチン氏が勝ちますと、2024年に次の任期が終わるわけです。そこで、次の任期が終わった時に一体どうなるのかが、重要な課題となります。プーチン氏の後継者が見つかっているのかどうか。あるいは、プーチン氏は2024年3月に71歳になるわけですが、依然として次を目指す何らかの手立てを探るのかどうか。というのもプーチン氏は、過去2008年から2012年まで、大統領から首相になっていました。この奇策には皆が唖然としました。その後にまた大統領に復帰したその任期が今、終わるわけです。

 そこで、これから先、一体どんな形のどんな姿の政権を考えるのか、そういう意味で言うと、実は2018年の大統領選挙よりも、2024年の姿というものが問題だということを、かなり多くの人が言っています。それがロシア政治の一つの特徴かと思います。


●プーチン派の意図は、2024年に向けた権力の永続化か


 現在、プーチン派の人はよく「70-70」という言い方で、プーチン圧勝のラインを考えます。70-70というのは、投票率70パーセントを満たした上で、そのうちの得票率70パーセントを達成することです。つまり、プーチン氏の支持率は時には80パーセントになるときもあるのですが、投票で70パーセントを取ろうと考えています。この70パーセント取ろうというのは、かなりハードルが高いことです。プーチン氏はこの高いハードルに挑戦しているのですが、その姿勢を見ていると、実は永続権力を目指しているのではないかと、考えることもできます。
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