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フランス国民議会選挙で勝ったマクロン大統領の課題

マクロン勝利のフランス国民議会を読む

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
2017年6月に行われたフランス国民議会の選挙は、マクロン大統領率いる新党「共和国前進」の圧勝に終わった。「マクロン派」と呼ばれる中道派は577議席中の350議席を確保。新政権においてマクロン大統領の公約が実行される基盤が整ったわけだ。政治学者で慶應義塾大学大学院教授の曽根泰教氏に、今回のフランス国民議会の選挙結果について解説いただく。
時間:12:06
収録日:2017/06/23
追加日:2017/07/13
カテゴリー:
≪全文≫

●マクロン派「大勝利」の幸先よい船出


 フランス国民議会の選挙結果は、皆さんもうすでにご存じだと思いますが、エマニュエル・マクロン大統領の「共和国前進(アン・マルシェ!、LREM)」が勝利しました。安定的な議会運営ができることになり、マクロン政権にはかなり幸先のいい船出だと言えるかもしれません。選挙結果の内容について、次の表でご覧いただきましょう。

 共和国前進と民主運動が中道派で、「マクロン派」といえる党派です。この二つが、577議席のうちの350議席を取りました。大勝利です。次に、中道でいうと若干右派になる共和党は、議席を減らしました。前オランド政権時の与党であった中道左派の社会党は、もっと減らして30議席になっています。また、あれだけ大統領選挙で活躍し、票を取ったマリーヌ・ルペン氏の国民戦線がどうなったのか、興味のある方もいるでしょう。しかしながら、フランスの制度で少数党が勝つのはとても難しく、国民戦線は8議席に終わりました。

 なぜ難しいのかを少し説明します。通常、過半数を取る選挙と比べ、比例代表制ならば少数党は当選できます。しかし、日本、アメリカ、イギリスのように相対多数の場合では割と難しくなります。ましてフランスの場合は絶対多数ですから、二回投票制で過半数を取らなければならないということです。一回目に過半数を取ればいいのですが、一回目で過半数を取る人は少ないので、上位二人の争いになります。こうなると、少数党にはさらに不利になり、勝利の難しい制度だといえるのです。

 選挙にはいろいろな役割があります。支持された人が勝てばいいという側面もあれば、選挙の結果で政府ができるという側面もあります。加えて、泡沫ないし少数党を排除するという意味もあるわけです。ですから、フランスの場合は、少数党が生き残るのはなかなか難しいということです。


●新内閣は非政治家もふくむ「混成部隊」


 今回の選挙結果としては、「第五共和政」としてフランス政治を長く形づくってきた共和党や社会党が衰退し、まったく新しい中道、つまり今まで議席のなかった共和国前進がいきなり300議席を取りました。同時に、この党は半数以上が新人で成り立っています。日本で新しい風が吹くと、「○○チルドレン」という人たちが当選しますが、それと似たような現象です。

 フランスの場合、過去には兼職も可能でした。地方議員...
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