ギリシャ問題を解き明かす~EUの問題点と日本への教訓~
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借金をしつつ国民投票でEU改革案を採決するのは筋違い
ギリシャ問題を解き明かす~EUの問題点と日本への教訓~
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
「ギリシャ金融危機には、日本にとって教訓になることがいくつもがある」と、政治学者・曽根泰教氏は語る。それは一体何なのか。ギリシャ金融危機を通して見えてくるEUの問題とは何か。曽根氏がギリシャ問題を解き明かす。
時間:15分49秒
収録日:2015年7月13日
追加日:2015年8月3日
カテゴリー:
≪全文≫

●これほど厳しい条件では問題が多すぎる


 今日は、ギリシャ問題を解き明かすということで、一般的に言われる「借金の返済」というギリシャ金融危機の問題、「国民投票」という手法の問題、「EUというシステム」の問題の三つについてお話ししたいと思います。

 借りたものは返すのは一見当たり前のことですが、実はなかなか厄介な問題をはらんでいます。一つに、自分で借りたものではない「過去債務」をどのように返していくかという問題があります。また、今回のギリシャ金融危機では、新たな融資が国民の生活改善に向かわず、借金の返済に回ることも問題です。その意味では、日本の「住専問題」やアジア金融危機などを思い出します。これらのときには、借り手の責任なのか、貸し手の責任なのかが問題となりました。今回も、貸した方が悪いという説も出ていますし、借りた方がなぜ無責任に借り続けたのかを問う視点もあります。

 今回の貸した方は、前回の金融危機で借金の問題をかなり解決したはずですが、いまだに尾を引きずっているようです。そこには、EU、IMF(国際通貨基金)、ECB(ヨーロッパ中央銀行)の主要3者の問題があるのですが、EUがギリシャに突きつけている条件が過酷すぎるのではないかということがあります。

 この話を聞くと、私にも記憶があるのですが、アジア金融危機の際には、IMFに対する強い批判がありました。当時専務理事だったスタンレー・フィッシャー氏が名指しでやり玉に挙げられ、少しやりすぎではないか、新しい現象が起きているのに古い処方をしているのではないかと追及を受けました。そのときIMFは、歳出を削減しなさい、増税しなさい、高金利を覚悟しなさい、構造改革をしなさいと、韓国、タイ、インドネシアといった国々に迫ったのです。これが、その前に起きたラテンアメリカ金融危機への処方箋と全く同じだったことから、「IMFの役割は構造改革を迫ることなのか」と、マーティン・フェルドシュタイン氏をはじめとする当時のアメリカの経済学者たちに厳しく指摘されました。しかし、今回の処方箋もまたアジア金融危機と似ています。古い処方箋なのです。

 そこでポール・クルーグマン氏やトマ・ピケティ氏などは、借金の棒引きは戦後責務の際にドイツも経験したではないかと批判しています。彼らは、「ドイツの一人勝ちなのに、これほど厳しい条件を突き...

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