●大統領選の不思議-トランプとサンダース
アメリカ大統領選は予測がつきにくいということを最初からずっと申し上げてきました。特にドナルド・トランプ氏はあっという間に消えるのではないかと、専門家ほどそういうことを言い続けてきたわけですが、このままいくと共和党の候補者にトランプ氏がなるのではないかと言われています。また、共和党がもし指名しなかったら、無所属で、無党派から出る可能性もあるということです。
このように、「トランプ現象とは何か」ということが片方にあり、もう片方にはバーニー・サンダース氏がいます。これもアメリカの政治の中では大変珍しい例で、自分は「社会主義者だ」と名乗っています。社会民主主義者である人がどうしてこんなにヒラリー・クリントン氏を追い詰めているのか。つまり、誰も対等の競争相手と思わなかったわけですが、そのサンダース氏がまだ生き残っています。これは不思議なことです。
●人々の不満を吸収する左右の候補者たち
この左右が出てきて、不満をぶつけているという見方が一つあります。それはその通りです。その通りですが、実は共和党の側からいえば、もっと極端な右がいたわけです。つまり、トランプ氏はどちらかというと穏健なのです。もちろん、トランプ氏の発言は大変過激です。彼の主張は確かに不法移民に対しては過激で、「メキシコとの国境に壁を作れ。壁の費用はメキシコに払わせろ」というような言い方をしています。特に不法移民、あるいはイスラム系の移民、難民に対して厳しいことを言うので、すごく極端な右と思われるかもしれませんが、イデオロギーポジションとしてはそれほどでもないのです。また、イデオロギーポジションでいうと、サンダース氏は明らかに左です。
では、この左右両方は不満の吸収でいう点でみるとどうか。今まで、共和党系の人は不満をぶつけることがありました。共和党系でいえば、過去ネオコン(新保守主義、ネオコンサバティブ)があり、ティーパーティーがあって、これらによってアメリカの共和党の足腰は非常に弱くなったと、私は思います。イデオロギー路線であるために、ほとんどの共和党候補者はティーパーティーの主張をのまざるを得ないというような形になってきたので、非常に硬直的な市場原理主義的な立場を取ります。
●支持層の変化に「アメリカの凋落」を見る
もう一つ、トランプ...