●新しいことを成し遂げるためには腹の底からの使命感や原体験が重要
今回、イェール大学のフェローたちと話をして感じたことがいくつかあります。
1つ目は、頭で考えるのではなく腹の底からの使命感や問題意識を持つことが非常に大事で、そのため原体験が持つ力はとても大きいということです。2つ目は、自分だけでは何もできないということを痛感する、本当の意味での謙虚さと、だからこそ皆を巻き込み一緒に行っていこうとすることの大事さです。3つ目は発信力です。この3つをすごく痛感しました。
1つ目からお話します。やはり頭で「これが大事だ」、「あれがしてみたい」と考えることはたくさんあります。しかし、新しいものを成し遂げていくときや大きな山を動かしていくときには、たくさんの人たちを巻き込んでいく必要があると思います。しかしそのときには、自分自身を突き動かすものがなければ、他の人の気持ちを突き動かすことはできません。よって、はじめから「他の人を動かそう」「他の人を巻き込もう」と思うのではなく、まず自分自身が何に情熱を持っているのか、自分は何に突き動かされているのか、また生きるために何をせずにはいられないのかということを問い掛けることがすごく大事です。そのことを追求していく中で、たまたまそれに周りの人たちが突き動かされていけば、自然と巻き込まれて一緒にやっていくことになるのかなと思います。
●「フォロワーシップ型リーダーシップ」が大事になってきた時代
2つ目ですが、一人ではできないという謙虚さ、そして他の人を巻き込んだり他の人をサポートしていく、半ばフォロワーシップにも似たリーダーシップというものが大事なのではないかと思っています。
20世紀型といっては語弊があるかもしれませんが、今は、大きな組織を「自分が率いていくんだ」というような形のリーダーシップから徐々に、人から押し上げられたり、人を押し上げてそれに自分も一緒に乗っかっていくような、新しい形のリーダーシップを大事にする時代になってきたのかなと感じます。それを「フォロワーシップ型リーダーシップ」、あるいは「調整型リーダーシップ」などさまざまな呼び方をしています。
特に今の若い世代の方々は、納得しないと動かず、納得すると爆発的に動くという特質を持っているように思います。そのため、「(俺が)やるからついてこい」というのではなく、若い彼らにも使命感ややりがい、あるいは当事者意識を持たせながら一緒に走っていくということが求められます。よって、巻き込まれるというより、若い彼らにも背負わせるという形で1人1人がリーダーになっていけるようサポートしていくうちに、全体のムーブメントが大きくなっていくことがあるのではないかと思っています。
今回のイェール大学のワールドフェローを見ていても、そういった形で、みんなと一緒になって人をサポートしながら、あるいは自分もサポートされながら一緒に率いていくリーダーシップというものが非常に顕著でした。
●新しいメディアと英語によって、世界への発信も可能になる
3つ目は発信力です。発信力といっても、必ずしもメディアだけのことではありません。自分が思っていることや、やっていることをいかに分かりやすく簡潔に、幅広く伝えていけるかということは、非常に重要だと思います。
昨今、インターネットをはじめさまざまなメディアの形が出てきています。既存のトラディショナルな媒体だけではなく、いろいろなメディアを通じて自分の考えを発信していくということをたくさんの人がやっていることに驚きました。
今回イェール大学のプログラムに参加したフェローは40歳前後の人たちばかりでしたので、SNSやインターネットの動画などを通じて、相当の量の発信をしていました。それが結果的にトラディショナルメディアの取材につながったというケースもあります。いろいろなメディアをうまく駆使しながら発信しているということが非常に印象的でした。
もちろん国の規模にもよると思いますが、例えば中国やインドの場合、国民の数も多いですし、何万人、あるいは何10万人もフォロワーがいるようなフェローも少なくありませんでした。
しかし、そこで重要だと感じたのは英語ができることです。英語ができると、世界中にオーディエンスが広がっていきます。私自身はどうしても日本語での発信が多いため、その点は反省しました。日本の1億数千万人のオーディエンスの方には発信してきているつもりですが、世界に対しての発信とは規模感が違い、リーチできる人数も違います。私もバイリンガルで発信し始めなければなと思いながら、三日坊主のままになっています。なので、これは私自身も心がけていきたいことです。
日本には非常に良いコンテンツが多く、素晴ら...