増税はなぜ問題なのか―貨幣と自由の関係論
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
貨幣は精神的自由の温床「選択と私有財産の自由」を生んだ
増税はなぜ問題なのか―貨幣と自由の関係論
山田宏(参議院議員)
山田宏氏は、1年半で5パーセントから10パーセントへ倍増する日本の消費増税を批判する。増税の何が、どのように、なぜいけないのか。貨幣と自由の歴史的関係をひもときながら、山田氏が鮮やかに問題点を映し出す。
時間:13分45秒
収録日:2014年4月4日
追加日:2014年7月3日
カテゴリー:
≪全文≫

●安易に増税に頼る点に、国の経営の問題がある


 山田宏です。今日は、リーダーが立脚すべき哲学についてお話しします。特に、「自由」と「平等」という二つの価値をよく考えてみたいと思います。

 現在、日本の行政はどんどん膨張しています。GDPは横ばいですが、政府の支出は膨れ上がるばかりです。今年の国の予算は約95兆円です。ほんの5、6年前は85兆円ほどでしたから、一気に10兆円も増えたことになります。GDPは増えていないのに、歳出ばかり増えるのはなぜか。高齢者が増えている中で、社会保障制度を維持・充実していくために必要だからです。そのために、消費税も8パーセントになりました。来年の10月には10パーセントになります。1年半で一気に税率を2倍にするとはいささか乱暴ですが、これまでは借金で何とかしのいできたものの、これ以上借金をすれば日本の長期金利が上がってしまうため、政府はやむを得ず消費税を上げる決断をしたのです。

 増税とは、会社でいえば商品やサービスを値上げするのと同じことです。しかし、会社の経営が悪化して借金ができなくなったからといって、自分の製品の値段を上げるでしょうか。上げたら、普通はその会社は倒産してしまうでしょう。会社を立て直す場合は、売り上げを増やし、コストをカットするのが原則です。

 国の経営でも、安易に借金や増税に頼るのではなく、やはり徹底的に売り上げ増、つまり成長経済をつくることを狙い、一方でコストカットを進めるべきです。この二つを徹底的にやったかどうかが問われなくてはなりません。しかし、国は「独占企業」のようなものですから、値上げしても文句を言う人がおらず、安易に増税に頼ってしまうのです。私はそこに国の経営の問題があると思っています。

 増税をすれば、重税国家になっていきます、そうしたら誰が困るかをよく考えてください。大金持ちは海外に逃れればよいのです。一方、所得の低い人たちはそもそも税金をあまり払っていませんから、重税はそれほどこたえません。もちろん消費税を上げれば低所得者層も多少打撃を受けますが、生活必需品には消費税をかけないとなれば、それほどではないでしょう。結局、増税に一番打撃を受けるのは、海外に逃げられない中間層の人たちで、彼らがどんどん没落していきます。これが重税の問題点です。

●貨幣が、選択と私有財産の自由を生んだ...


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
「中華民族の偉大な復興」と中国外交(1)外交姿勢・前編
四字熟語で見る中国外交の変化
小原雅博

人気の講義ランキングTOP10
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(2)秀吉の実像と「太閤神話」
秀吉・秀長の出自は本当は…実像は従来のイメージと大違い
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥