「プラチナ社会」実現に向けて
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
これからは「量」から「質」の社会へ
「プラチナ社会」実現に向けて
小宮山宏(東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツ・アカデミー座長)
衣食住、移動手段など、様々な面で量的に満ち足りた人類は「量」から「質」の時代へ進む。「質」の時代に重視される論理・視点とは何か。向かうべき社会と産業の方向を示す。
時間:15分42秒
収録日:2013年12月6日
追加日:2014年7月1日
≪全文≫

●文明が追い求めてきたことを今、私たちは全て手にした


 私は、これから人類が目指すビジョンとして、「プラチナ社会」というものを提案しています。それについてお話をします。

 今、人類は本当に節目の時代を生きていると思います。それにはいくつかの意味があります。前回お話しした、1万年前に世界各地で農業ができるようになった農業革命や、物が非常に大量につくれるようになった産業革命という話が1つです。

 また、産業革命の結果、昔はごく一部の人が独占していた物の豊かさを、私たち一般の人間が持つことができるようになりました。例えば自動車であれば、今はもう欲しい人は皆、持っています。日本を含め先進国では、2人に1台の割合で保有しています。

 加えて、情報というものは、昔から本当に貴重品でした。情報を早く得た国が戦争に勝ったり、情報を早く得た人がお金を稼いだりというようなことでした。しかし、今や端末で世界のさまざまな情報を、私たち一般の人間が見ることができるようになりました。

 それから、長寿を手にしました。かつては平均寿命24、25歳という状況がずっと続き、ごくひと握りの特権階級の人たちだけが50歳、60歳、70歳という長寿をまっとうしていましたが、今、先進国の平均寿命は78歳です。これはごく一般の人が長寿を楽しめるようになったということです。

 そのような意味で、衣食住、移動の手段、情報の手段、長寿といったような、いわば文明が長い間ずっと追い求めてきたことを、一般の市民、私たち自身がもう全て手にしました。これは本当に人類史の節目なのです。


●これからは「量」から「質」の時代へ


 では、そのような節目を迎え、これから社会は一体何を目指していくべきなのでしょうか。つい最近までは、もっと物が欲しい、もっと美味しい食べ物が欲しいと、ずっと進歩してきましたが、その欲望が産業につながり、私たちの文明はそれをもう果たしてしまったのです。そうであれば、この後、何に向かうべきなのでしょうか。

 私はこの状況を「量的に満ちた」ということだと捉えています。量的に満ちた後は、「質」に向かうのは当然ではないでしょうか。例えば、長寿です。単に長生きすればいいというわけではなく、どうすれば健康で自立して、いわば誇りある人生をまっとうできるかということが、長寿の質です。

 例えば、衣食住の住居です...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
巨大地震予知の現在地と私たちにできること(1)地震予知研究と前兆すべり
地震予知に挑む!確かな前兆現象を捉える画期的手法とは
梅野健
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
前真之
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査(1)目的と潜水艦史
海底に突き刺さる旧日本海軍の潜水艦「伊58」を特定!
浦環
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏