米中の貿易戦争の行方と今後の日本の役割
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
中国は後発国時代のハンディを未だに享受している
米中の貿易戦争の行方と今後の日本の役割
伊藤元重(東京大学名誉教授)
世界の一大関心事ともいえる米中貿易摩擦。しかし、これは米中二国だけの問題ではなく、世界の経済体系にかかわるイシューであるといえる。アメリカが中国の通商政策を批判する根拠はどこにあるのか、中国は今度どのような対応に出るのか、そしてその状況下で日本はいかなる国際的役割を果たしていくべきか。
時間:11分04秒
収録日:2018年11月14日
追加日:2018年12月31日
≪全文≫

●米中通商政策問題は世界にとっての構造的課題


 アメリカの中間選挙も終わって、世界の関心はアメリカと中国の通商政策、特に関税戦争に集まっています。そこで、今後の方向やあるべき姿について考えてみたいと思います。

 ご案内のように、中国の通商政策や産業政策に対して非常に厳しい議論をしているのは、別にトランプ大統領だけではありません。むしろ、共和党、民主党ともに米国議会の議員は中国に対して非常に批判的な姿勢を強めていますし、アメリカの国民の中にも、中国はフェアではないということを言う人は多くいます。そう考えると、米中の通商政策とか経済関係の問題については、ドナルド・トランプ大統領独自の問題というよりは、米中、あるいは世界の大きな構造的課題、テーマであると考えてみる必要があると思います。

 ただ、当面の流れですが、アメリカは厳しい姿勢を取り続けるとして、注目すべきは中国がどう対応するだろうかということです。これまでのところ、中国は非常に強い態度で反発してきましたし、アメリカからの圧力には屈しないという姿勢を見せるのが、今の習近平政権にとっては国内の政治的維持という意味でも重要です。したがって、なかなか米中の対立がどこかで緩和されるという見通しは少ないように思われます。


●経済的メリットを考えれば中国側譲歩の可能性も


 しかし、一部の中国関係の人が少々違った見方をしているというのも、関心の持たれるところです。彼らがどういう言い方をしているかというと、例えば台湾の海峡、南西諸島、あるいはウィグル地区の問題、これらのことはおそらく中国にとっては核心的利益に関するもので、こういうことに対して、アメリカから圧力があった場合、それで中国が屈するということはあり得ないけれども、経済的問題に対しては少し譲歩の余地があってもいいのではないだろうか、ということです。

 このようなことを、例えば中国の識者が新聞などでコメントしているのを見ると、確かに中国にとって、アメリカが要求していることに対して全面的に反発することが、経済的にメリットがあるかどうかということは、かなり疑問です。また、そこでさらに対立関係が深まることが、結果的に中国の核心的な利益に触れるような形で広がっていくことを、中国は決して好まないでしょう。ですから、どこかで少し中国の譲歩や妥協が起こるのではないかと...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
こどもと学ぶ戦争と平和(1)私たちに必要な想像力と戦争体験
なぜ戦争が起こるのだろう…大切なのは想像力と生の声
小原雅博
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
トランプの誤謬…米国製造業を壊した犯人は米国の経営者
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
高市政権の進むべき道…可能性と課題(1)高市首相の特長と政治リスク
歴史的圧勝で仕事人・高市首相にのしかかるリスク要因
島田晴雄
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(1)人を真に活かす人事評価とは
ソニー流の「人材論」「新規ビジネス論」を具体的に語ろう
水野道訓
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
こどもと学ぶ戦争と平和(2)「本当の平和」とは何か
「平和」には2つある…今の日本は本当に平和なのか?
小原雅博
いま夏目漱石の前期三部作を読む(9)反知性主義の時代を生き抜くために
なぜ『門』なのか?反知性主義の時代を生き抜くヒント
與那覇潤
AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(6)『閉された言語空間』の問題意識
江藤淳と喧嘩…加藤典洋『テクストから遠く離れて』の意味
與那覇潤
大谷翔平の育て方・育ち方(9)大きな使命感を持って
「野球人気の回復に貢献したい」――大谷翔平の強い使命感
桑原晃弥
新しいアンチエイジングへの挑戦(6)ビタミンとお米とアンチエイジング
日本人に必要な栄養素は?幹細胞治療をどう考える?
堀江重郎
衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(1)安いニッポンと急性インフレ
世界で一人負け…「安い国」日本と急性インフレの現実
宮本弘曉