プラチナ社会における農業
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
低いといわれる日本の食料自給率も生産額ベースでは70%
プラチナ社会における農業
小宮山宏(東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツ・アカデミー座長)
私たちの食を支える農業従事者の減少と高齢化、そしてTPP。日本の農業は待ったなしの転換期に立たされている。さまざまな打開策が考えられているが、小宮山宏氏の提案は、農業の二分化による高収益農業への転換にある。そして、「プラチナ構想」に基づくプラチナ社会における農業は、国土全体をマネージする方法へと向かう。
時間:10分16秒
収録日:2014年6月19日
追加日:2014年8月7日
≪全文≫

●世界の農業の動向から、日本農業の未来を考える


 日本の農業については、さまざまな観点から言われていますが、一つ、言われていない観点があります。

 それは、お米のような大規模化すべきものと、ハウスで栽培される野菜や果物あるいは高付加価値の作物とを分けて考えてはどうかという点です。

 では世界に目を向けて、最も農業輸出額の大きい国を考えてみましょう。皆さんアメリカと答えますが、それは正解で、アメリカが世界一の農業輸出国です。

 では2番目はどこかと聞くと、たいていはアルゼンチンやオーストラリア、フランス等、非常に広大な農地を持つ国が挙げられます。違うのです。ほとんど当たりません。知る人ぞ知る世界第二の農業輸出国は、オランダです。

●オランダ式の高付加価値、アメリカ式の大規模農業


 では、オランダは何を作っているのか。一言で言うとトマトであり、その他パプリカなど何種類かの野菜です。

 しかしオランダは、あの狭い国土でどのように農作物を作っているのでしょう。答えはハウス栽培です。オランダのトマトは、こんなに小さな根っこから10メートルもの高さに成長します。ハウス内の水耕栽培で巨大なトマトを育てるため、生産性が非常に高くなります。

 日本では、お米の収量が1ヘクタールあたり約5トンと言われます。オランダのトマトの生産量は1ヘクタール50トンです。その上、トマトやパプリカなどの野菜は、お米や小麦などの穀物と比べるとずっと高額ですから、高付加価値産業として十分な収益が出るわけです。

 アメリカ型の大規模農業でトウモロコシや小麦などの穀物を主に作っていく農業と、高付加価値の野菜や果物を作っていくタイプと、二つに分けると考えやすいと思うのです。

●日本農業の現状を金額ベースの食料自給率で考える


 では、現在の日本の農業はどんな状況にあるか。酪農も含んだ農業生産は、全部で8兆円と言われています。そのうちお米は、2兆円に満たない1兆8000~9000億円ほどで、残りは高付加価値の野菜、果物、あるいは酪農製品です。

 次に、日本の農業の自給率はどれぐらいなのか。よく40パーセントと言われますが、これはカロリーベースで表した数字です。金額に置き換えるとどうでしょうか。お金での自給率、すなわち農業の全売上のうち、日本で生産されたものの割合はというと、70パーセ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査(1)目的と潜水艦史
海底に突き刺さる旧日本海軍の潜水艦「伊58」を特定!
浦環
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
前真之
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦