M&A・悪質買主とどう戦うか
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創業者の急逝…会社を守る方法は?朝日出版社のM&A騒動
M&A・悪質買主とどう戦うか(1)朝日出版社のM&A騒動:前編
河合弘之(さくら共同法律事務所 所長・弁護士/映画監督)
経営者の高齢化に伴い、事業を第三者に任せるM&Aの手法が中小企業のトレンドになっている。しかし、その中には悪質買主も存在する。今回のシリーズ講義では、新聞等でも報じられた朝日出版社のM&A騒動について、旧経営陣側に立って手段を講じた河合弘之弁護士の話を聞く。創業者の死が招く不測の事態から会社を守る方法はあるのか。まずは本騒動のあらましを解説する。(全3話中第1話)
時間:15分03秒
収録日:2025年3月24日
追加日:2025年6月4日
≪全文≫

●ワンマン社長の急逝と持ち株の行方


 弁護士の河合弘之です。今日は、私が最近扱ったM&Aの事例、それも大変うまくいった事例をお話しいたします。

 問題の会社は、株式会社朝日出版社という年商12億円ぐらいの中堅出版社です。社歴としては昔(1991年)、宮沢りえさんの『Santa Fe(サンタフェ)』という写真集で大ヒットを飛ばしました。近年は、東大の加藤(陽子)教授が書いた『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』などを出版して、知的レベルの高い出版社として中堅の、かなり重要な会社だといわれています。

 この会社の財務的な特色は、九段下の100坪の土地にかなり立派な自社ビルを持っていることです。これは不動産業者にとっても大変魅力のある物件になります。このビルは、先ほど言った『Santa Fe』の出版などで大もうけをしたときに、その利益で(土地を)買って建てたということのようです。

 こちらの(会社の)株は、原(雅久)氏というファウンダーが100パーセント持っていました。いわばワンマン経営だったわけです。この方が2年ほど前(2023年4月)に急死したため、会社の株は奥さまとお子さまが相続しました。従来の役員としては、小川(洋一郎)氏という方が社長でした。


●九段下の自社ビルの獲得が狙い?


 (原氏の)奥さまとお子さまは、(相続の)1年後に株をT社というところに売ってしまいます。従来の役員は「その買主は株主として好ましくない」と反対しましたが、(遺族は)その反対を押し切って、売買価格当初4.5億円で、T社に売却の契約を結んでしまいました。

 旧役員および従業員は、そのT社が出版とほとんど関係がなく、また(出版に)関心もない会社であるため、「九段下のこのビルが目的ではないか」と疑心暗鬼を募らせて反対をしたわけです。

 T社が買ってしまえば、出版業は廃業させられるに違いない。私たちは出版文化を守りたい。自分たちの職場を守りたい。そのようなことで、旧役員と従業員が一体となって反対運動をしたということになります。

 それに対してT社は、遺族から委任を受けて、従来の役員である小川氏らを解任しました。そして、新たにS氏という代表取締役を選びました。(T社は)まだ株主ではないのに、いわば株主であるかのごとく振る舞って、旧役員...

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