●手を尽くした末に、真の解決策は何かを考える
しかし、100パーセント株主が行ったことを無効だというのは、なかなか難しいことです。それでも私たちは諦めることなく、あの手この手を考えました。
例えば、「旧株主の方の認識能力に問題があるのではないか」という仮説を立てて、いろいろと証拠をあさりました。「この人たちには、旧役員を解任して新役員を選ぶような高度な判断をする能力はない」というような証拠を見つけて裁判所に出しました。
これに対して、T社側は非常に驚きました。「こんな証拠まで出してきた。これは、まずい」という形で、そこから態度の軟化が始まったわけです。
私は今、お話しした段階では本訴と仮処分をかけ、いわば会社の事実上の支配権を取られることを法的に阻止しながら、一定程度有利に進めてはいました。しかし、そのようにストップをかけているからといって、あるいは起こした裁判に勝ったからといって、この問題が解決するわけではありません。新たに株主総会をきちんとやり直せば、また元の木阿弥で、T社に売られてしまう。よって、裁判に勝っただけでは真の解決策にはならないのです。
●M&A仲介会社を介したホワイトナイト探しへ
そこで真の解決策は何かとよく考えました。考えた結果、これはもう、新たなホワイトナイトを探してきて、そこに買い取ってもらうしかないと思い至ったわけです。
そうかと思った私は、どこかにいい買主を探す方法はないかと考えたとき、私の中にも何人かそういう候補はいました。例えば私の顧問先に買い取ってもらうのもいいと考えたこともあります。しかし、自分のそういった偶発的な思いつきで買主を探すよりも、M&A仲介会社に頼むのが一番いいだろうと。
そこで、私は日本M&Aセンターという会社に仲介を依頼しました。これは、中小企業レベルのM&Aの仲介会社としては断然トップの会社です。私はたまたま、この日本M&Aセンターという会社の顧問弁護士を30年ほど務めていました。
「こういう事件なのだけれど、ホワイトナイトを探してくれないか」と日本M&Aセンターの幹部役員に言うと、「分かりました。いい担当者をつけます」と答えて、早速つけてくれた担当者が、私のところへ来ました。
私は担当者に対して案件の概要をお話した後、「この交渉は難しいですよ。単...