●林業活性化が持つ意味-1.森林、国土の維持
今日は、林業、あるいは森という話をしたいと思います。
「林業を維持する」ということには、大きく分けて二つの意味があります。一つは、森、国土の維持に直結しています。これから梅雨に入って、その後、秋には台風が続々とやってきて、マスコミ報道でも「大雨が降って土砂崩れ」という話が間違いなく続くわけです。
では、どうして土砂崩れがこのように頻繁に起こるようになったのか。雨の降り方が激しくなったということもあるのでしょうが、もっと大きな理由は、土砂崩れが起きるような森にしてしまった、ということがあるのです。それはなぜかというと、日本は林業をもうほとんどつぶしてしまっている、やっていないということなのです。
林業をやらないということは、森に人の手が入りませんから、密林になってしまう、生い茂りすぎるのです。そうすると、下のほうの土のところまで日の光が入らない。すると、根や下草がどんどん弱くなって、土壌が緩んでしまいます。そこに雨が降るので、その緩んだ土壌がざーっと流れるということになります。
これには、いくつもはっきりした証拠があります。今、日本には林業をきちんとやっているところ、ほったらかして人の手が入らないところが、いくつも混在しているのですが、林業をやっているところでは、土砂崩れはほとんど起きていません。
ですから、林業を活性化させていくということは、第一に、森、あるいは国土をきちんと維持していくための不可欠な条件でもあるのです。
●林業活性化が持つ意味-2.「林業」という産業育成
林業の持つ意味のもう一つが、産業としての林業です。おそらく昔、人間が人力で木を切っていたという時代と、今のフィンランドやスウェーデン、あるいはアルプス、つまりオーストリアなどで行われている最先端の林業の生産性には大変な差があります。一人当たりの材木の生産数というのは、昔と比較すると100倍から数100倍違います。今の日本の林業というのは、おそらくその先端の林業と比べると、10倍以上生産性が低いため、これが本質的に、外材の安さに押されるということになっているわけです。
今、日本は65パーセント、国土の3分の2ぐらいが森で覆われている森林国なのですが、材木の自給率は25パーセント。75パーセントを輸入しているわけ...