●カントリークラブは、負担と支出の関係が明瞭
今回の話題は「カントリークラブの発想」です。ここで言うカントリークラブとは、アメリカやイギリスのゴルフクラブあるいはスポーツクラブのことを指します。このカントリークラブの発想が、いわゆる地方分権や地方税を考えるときの一つのひな形になるのではないかというのが私の意見です。メンバーシップがはっきりしているカントリークラブの会費の徴収の仕方が、ある意味で地方税を考えるヒントになると思うのです。
日本の場合、ゴルフクラブは会員権制です。最初に多額の会員権を支払って入会し、後は固定の会費という初期投資の大きい制度になっており、私が今回話題にしている英米のカントリークラブの制度とは少し違います。英米のカントリークラブにおける会費は、前年度のクラブの支出を会員で頭割りにして、翌年徴収する形を採っています。
日本のゴルフクラブですと、高い入会金を払ったのだからレストランの設備を改善して欲しいなどとメンバーがクラブにさまざまな要求をしがちですが、英米型の場合、余計な支出をしてしまうと翌年の自分の会費に跳ね返ってきますから、クラブの支出に皆が注意を払いますし、会員が自ら抑制的になります。つまり、「こういう改修工事をすると、翌年の会費に響きますね」というように、負担と支出の関係がかなり明瞭なので、全員がメンバーシップを最大限発揮しようとするのです。これがカントリークラブのあり方です。
●フリーライダーを減らす新たな形の分権化が必要
このカントリークラブの発想をある意味で地方行政に導入しているのが、アメリカのタウンミーティングです。アメリカの小さな自治体では、財産税(日本でいう固定資産税)などの約半分が高校や中学校に使われていますから、親たちは高校や中学校の運営に非常に関心を持っています。そこでタウンミーティングを行うと、例えば子どもが私立の高校に通っていて税金の負担だけを背負い込んでいる人などは、無駄な使い方をしないで欲しいと訴えることも可能になります。このように納税と歳出が密接に関係するタウンミーティングのメカニズムは、基本的にカントリークラブの発想から来ているのだろうと思います。
一方で、現在の日本の地方分権論は、このようなカントリークラブの発想とは少し異なります。日本の地方分権論には良いところもありますが...