●人生はアクシデンタリーに決まるものだ
―― 先生、今度、お孫さんが生まれましたよね。
小宮山 誰ですか。僕? 生まれました。
―― 先ほど言われた話の中に、「今の職業は3分2がなくなって、新しい職業が生まれる」とありました。そこで、お孫さんにどういう人になってもらいたいですか。どのようなプロセスを行ってほしいですかね。
小宮山 それを考えないのが僕です。それは考えてはいけないと思っています。そんなものは若い人が決めること。だから、僕は息子にもほとんど言っていないですよ。
―― 言っていない?
小宮山 言っていません。それは言わないようにしています。だから、名前も親の思いがあまり反映しないような名前を付けているのです。僕の同期には、「勝利」という名前が多い。また、あの八紘一宇から「邦」という字を使った「邦夫」とか、そういう名前が多い。僕は、そういう名前は付けません。だから、何となく「尚樹」とか「紀子」と付けましたが、ほとんど意味はないでしょう。
―― もう自分で自由に選べと。
小宮山 そうです。だって、若い人がどんな職業に就くか、そんなことは分かりませんから。
―― それはそうですよね。自分の生きた時代と根底から違っていますものね。
小宮山 だから、若い人にどんな人生がいいかというと、強いて言えば「自分の好きなように生きろ」ということ。そこは自由だと、僕は思います。
―― でも、それがやはり一番いいのでしょうね。
小宮山 と、僕も思います。
―― 自分で選んでいくから、そこで挫折しようが何しようが、全部経験値となるわけです。
小宮山 だって、人生は計画などできないし、計画したら面白くないのが人生だと、僕は思っています。どういう人と結婚したいか、そんなことが分かるものでしょうか。
―― 出会いと偶然性ですよね。
小宮山 アクシデンタリーに決まるのです。
●研究者の道へ進むきっかけ1~叔父の言葉と卒論研究~
小宮山 僕は、化学工学という分野が専門ですが、この間、「私の履歴書」のようなものを書いたのです(『化学工学』2014年第78巻連載「私の研究者・技術者人生」)。そこにも書きましたが、化学工学に進学したことも、進路を出す直前の夏休みに叔父の家に遊びに行ったことがきっかけでした。そのとき、叔父はたまたま三菱化成に勤めていたのです。
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