日中首脳会談の大きな意味
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
関係好転への貴重な30分だった北京でのAPEC
日中首脳会談の大きな意味
ジェラルド・カーティス(政治学者/コロンビア大学名誉教授)
APEC(アジア太平洋経済協力会議)に参加するため中国・北京を訪問した安倍晋三首相は、2014年11月10日昼、中国の習近平国家主席と会談を行った。2012年5月以来約2年半ぶりで、第2次安倍内閣では初めてとなる、この日中首脳会談の大きな意味を、ジェラルド・カーティス氏が解説する。
時間:8分41秒
収録日:2014年11月10日
追加日:2014年11月13日
カテゴリー:
≪全文≫

●尖閣問題で「中国の意見は違う」と認めたのは日本からの大きな譲歩


 習近平さんと安倍晋三さんの会談が今日行われました。2、30分話したらしいです。どういう中身だったのか、細かい話は分かりませんが、しかし、それがどうであったとしても、二人が会ったということだけでも、ものすごく意味が大きいと思います。

 この会談が実現したのは、やはり習近平さんと安倍さんがお互いにすごく妥協して、譲歩したからだと思うのです。特に僕が安倍さんを高く評価するのは、一つは尖閣諸島について、これは「日本の固有の領土であって係争地ではない」と言いながらも、4項目の合意文書の中で、「異なる見解を有している」と、「中国の意見は違う」ということを認めました。つまり、日本としては、“legal dispute”はないけれど、それについての“dispute”があることを認めたのです。これは中国から見て、日本からの大きな譲歩です。


●2013年夏の会談交渉は日本から断る形で不調に終わった


 中国側がこの譲歩を引き出そうとしたのは、実は去年の夏からです。名前は伏せますが、今の安倍政権の中心人物の一人と去年の夏に会って食事をした時、「カーティスさん、秋になったら日中関係は非常によくなりますよ」と言われました。なぜかというと、「尖閣諸島の問題についての合意ができたから」ということでした。それは、「日本の固有の領土であって係争地ではない」という日本の立場を堅持しながらも、尖閣諸島の問題が日中の間の大きな外交問題、外交案件として存在することは確かだから、トップリーダーが会えば当然、尖閣のことをアジェンダにのせるべきだという合意をする。その上で二人が会うという話を聞いたのです。しかし、その時は何もありませんでした。

 今年の4月にまた、その方と東京で会い、食事をしたのですが、座ってすぐに僕は、「去年の夏に“秋にでも習近平さんと安倍さんの会談があるだろう”とおっしゃっていたけれど、どうしたのですか?」と聞いたら、その時に面白い返事が返ってきて、「それは日本の方が断った」と言うのです。

 しかし、なぜ断ったのかを言ってくれないので、後になって、その方の上の方に聞いたら、断った理由は、去年の夏に安倍さんが「北京に特使を送って交渉を行って、アジェンダセッティングをして、そして会いましょう」と言ったら、中国の方か...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(2)日本人が知らない世界エンタメ市場
実は「コンテンツ世界収益ベストテン」に日本勢が5つも!
水野道訓