●現時点での解散が長期政権を狙うラストチャンス
こんにちは。朝日新聞社の星浩でございます。衆議院総選挙がいよいよ始まりました。今回の選挙について、何回かに分けてお話しいたします。1回目は、この選挙の意味について考えてみたいと思います。
今回の選挙は、安倍晋三総理が突然提起しました。法律上は2015年10月、8パーセントから10パーセントへ消費増税をすることが決まっていますが、その法律には景気条項がありまして、景気動向によっては延期が可能です。安倍総理は今回、消費増税を18カ月延期し、2017年の4月からにするという判断に至りました。そのことについて国民の信を問うという名目で衆議院の解散に踏み切り、総選挙を行う宣言をして解散劇がスタートしたわけです。
振り返りますと、安倍総理はどうやら秋口から解散のタイミングを狙っていたようです。9月に内閣を改造して、女性閣僚を5人入れ、幹事長には谷垣禎一さんを起用するといった比較的斬新な布陣にしましたが、思いがけず小渕優子経産大臣と松島みどり法務大臣に政治と金をめぐるスキャンダルが噴出し、2人の女性閣僚が辞任することになりました。それによって政権の求心力が一気に低下しました。
そこで安倍総理の頭の中に何が出来したかと言いますと、来年の政治日程は政権に厳しいことばかりだということです。年が明けると、まず鹿児島・川内原発の再稼働を認めることになります。さらに4月には統一地方選があります。自民党の議員は、統一地方選で必死に活動した分、その後は国政選挙のために一生懸命動く熱意が冷めるため、統一地方選の後は自民党があまり有利でないというのが、永田町のジンクスなのです。
加えて、景気もなかなか浮上してきません。それから、春から夏にかけては集団的自衛権の関連法案を国会に提出します。来年4月以降の通常国会で、自衛隊法改正案、周辺事態法の見直しなどによって、自衛隊が海外で武力行使できる道を開くのです。しかし、そこでは相当もめることになりそうです。このようなことも踏まえると、来年の春以降は厳しい政局が続き、政権の求心力がさらに低下する可能性があります。
安倍総理は、来年の秋に自民党の総裁選を控えています。この総裁選で何としても再選を勝ち取って、残り3年の任期を得ようという狙いがあります。そのためには、この時点での解散が...