●金融市場の現況:インフレ傾向が続く米国、上昇する日本株
皆さま、こんにちは。養田でございます。
それでは、今回は2023年春の時点で発生している事象を元に、世界経済ならびに金融市場でどのようなことが起こっているのかについて、お話しさせていただきます。
この資料をご覧ください。まずはテーマ、内容の確認です。ここ半年(2022年12月~2023年5月)で新たに起こったこと、変わらないことについてまとめています。
短期的には2022年12月以降、ここにあるように、日銀がYCCのレンジ拡大をするなど金融政策に変化が生じ、その後の植田新体制発足で政策の行方が注目されています。そして米国におけるインフレ上昇が頭打ちになってきたものの、依然高い水準にあります。また、シリコンバレー銀行やクレディスイスをはじめ、いくつかの金融機関の破綻がありました。そして、ここへきて日本株が他国の株に比べ大きく上昇していることなどの事象が発生しています。
補足ですが、イールドカーブコントロールの「イールド」とは、金利、利回りのことを意味し、イールドカーブコントロールとは、日銀の政策を例にとれば、中央銀行による国債の買い入れなどによって10年金利の水準を直接コントロールするものです。
また、中長期的な話題としては、やや専門的になりますが、米国2年国債と10年国債の利回りの逆転現象が起きています。これを「逆イールド」になっている、などといいますが、これは通常、大きな景気後退前に現れる現象です。詳細を後ほどご説明したいと思います。
最後に、同じく中長期的な話として為替の需給構造についてお話しします。
●「見直し買い」による日本株上昇も、ドルベースではまだまだ割安
それでは、こちらの資料をご覧ください。まずは足許の金融市場環境を、特に米国を中心に見ていきます。
このグラフは2019年のコロナ禍の発生前からの米株、金利、為替などの動きです。濃い目の青い線が米株、赤い線が米2年金利、その下の薄い青が10年金利、オレンジの階段状の線は短期の政策金利の推移です。また、少し濃い紫色の線が為替のドル円の値動きになります。
グラフの上の囲みにありますように、コロナ禍の発生後、大規模な財政政策、金融緩和により株価は上昇しました。その後、インフレ加速によりFEDは急速なペースでの金融引き締めを実施し、それによる金利上昇と共に株価は下落しました。
その後、2022年の年末あたりからインフレ上昇がいったんピークを付け、金利上昇ペースが緩やかになるにつれ、株価は下落から横ばい推移に転じました。3月には米シリコンバレー銀行、そして欧州クレディスイスの破綻で米金利は急低下しました。株も一時的には下落しましたが、米当局の素早い動きにより株価の大幅な下落は免れています。
為替のほうは、2022年の年末にかけ、日銀のYCCレンジ拡大が金利上昇懸念となり、ドル円は2023年初めに1ドル127円台まで円高となりました。もっとも、その後日銀の政策が様子見となったこと、あるいは米金利が高止まりしていることもあり、上下動を繰り返しながら140円あたりの円安方向へ推移しています。
この資料をご覧ください。こうした中、日本の株は足許でかなり上昇しています。
まず濃い青はドルベースの米株推移、薄い青は円換算した米株です。一方、濃いオレンジは円ベースの日本株、そして黄色の線はドル換算の日本株です。2019年のコロナ禍前を100として比較しています。
日本株はコロナショック以降、米株対比でかなり劣後していましたが、ここへ来て急に追いついてきた感じがあります。ただし、ドルベースでそろえてみれば、黄色い線のように日本株は米株対比でまだまだ割安です。
足許の日本株上昇は、米株などが横ばい推移する中で、割安株の見直しというテーマにより、見直し買いが入っているという側面が大きいように思います。日本人にとっては高いように見える株も海外から見ればまだまだ割安です。不動産などでも同じようなことがいえます。
一方、多くの日本人が為替ヘッジをかけずコツコツと買っている米株は、薄い青い線です。米株は一度下落したはずですが、日本人から見るとほとんど下落していません。円を軸にした資産形成上は好ましいように見えますが、これは円安の影響であり、ドルで買う海外勢対比でかなり高い米株を現在買っているともいえます。購買力が低下しているということになります。
●日銀の金融政策は「できればやりたい」だけでは変更できない
この資料をご覧ください。次に、足許で注目さ...