●世界中の関心の的・アベノミクス
今、アベノミクスは、ものすごく世界中の関心を集めているのです。『フィナンシャル・タイムズ』紙は私もよく読んでいますが、ほとんど毎日のようにアベノミクスに関する大きな記事が出ます。このようなことは、40年ぶりです。終戦後高度成長の、焼野原の中から不死鳥のように立ち上がったという時、あの『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(エズラ・ヴォーゲル著)の頃はずいぶん話題になりましたが、それからは全然日本は話題になりませんでした。
しかし、今はすごいですね。「三本の矢」というのも分かりやすいし、金融、財政、構造改革というホップ・ステップ・ジャンプになっています。ただ、世界史でも珍しい18年間もデフレに沈んでいた国が、経済政策で復活するのかどうかというのは、これは知的にも政策的にも大関心です。
もし、これで日本の経済が復活したら、ものすごい前例になって、世界中がマクロ経済学を確立したケインズに目を開かされた時のような状態になると思います。そして、復活しなければ、「ほら、見たことか」ということになる。ですから、『エコノミスト』も『フィナンシャル・タイムズ』も真面目に議論しています。珍しいことですね。ただ、今までずっと私がお話ししたので、成長戦略の中身は、多分いま皆さんが日本で一番詳しくなっていると思いますけれど。
●成長戦略とは、日本経済社会の体質改革
成長戦略がやっていることとは、結局、何だと思いますか。一言で言うと、これは成長戦略というよりは、日本の経済社会の体質を変える政策なのです。そして、その「体質」とは何かというと、戦後改革でつくって固定化された体質なのです。この体質に、規制改革会議の大田弘子さんなどは、もう真正面から刃で突っ込むようなことをやるわけです。素晴らしいことだと思います。しかし、「体質改革」と「成長」とはつながるのかな、という感じがしますが。
それで、前回言いましたように、日本経済には実質2パーセントの成長率が必要であり、名目3パーセントでは足りないのです。実際に問題を吸収していくには、実質で3~4パーセント、名目で4~5パーセントはいかないと、無理なのですね。
●高度成長期と同様の方法では成長できない
では、どうしたらいいのだろうということになります。一昔前でしたら、公共投資で成長で...