対アジア輸出の可能性を広げる小水力発電
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
大型水力発電の生態系への影響は重大問題。だから・・・
対アジア輸出の可能性を広げる小水力発電
小宮山宏(東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツ・アカデミー座長)
日本の河川は欧米のそれとは異なり「急流」という特徴を持っている。こうした特徴を生かした日本の小水力発電には、大型発電にはないさまざまなメリットがある。株式会社三菱総合研究所理事長・小宮山宏氏が、日本の小水力発電の可能性と広くアジアを視野に入れた展望を語る。
時間:6分32秒
収録日:2015年2月5日
追加日:2015年3月10日
≪全文≫

●時をへて急流に変化した日本の河川


小宮山 日本のほとんどの川は急流ですが、それに関してこういう事実があります。

 今年(2015年)の日本国際賞は、東京大学名誉教授の高橋裕先生が河川工学の研究で受賞されています。先生は、日本にも明治時代から川のいろいろな変動を測定しているデータがあることに気づかれたのです。水位など川の流れの変化、明治時代からそれを1時間ごとに測定しているデータが本当にあって、その土地の人たちは、「最近は雨が降ると下流に洪水が来るのが速くなったね」というような話をしていました。高橋先生は、コンピューターがない時代に、その膨大なデータを分析されたのです。

 そうすると、時代とともに降雨が下流に到達する時間が明らかに速くなっていて、その原因を調べていくと、河川をコンクリートで固めていっていることが問題だと、先生は気がつかれたわけです。自然の吸水作用や住民が水を取ったり流したりする様式を含めて、全体で治水を考えるべきだという考えを高橋先生は提示されて、今ではそれが日本では常識になっているのです。


●日本の小水力発電技術、アジアへの輸出に最適


小宮山 高橋先生は、アジアのモンスーン地帯の川も、ドナウ川、ミシシッピー川も調べているのですが、ドナウ川やミシシッピー川は日本と全然違うのです。あちらは雨が降ってから下流に来るまで10日くらいかかりますが、日本の川は雨が降ったら数時間でワーッと下流に来るのです。ですから、今の日本の政策は貯水もやり、場合によっては逃がす所もつくったり、流域全体で管理する方向になっているのですが、これが、モンスーン地帯には最適な方法なのです。したがって、日本で使った技術がアジアには出やすいのです。

 小水力発電もその一つですが、一番典型的なのは実はゲノムなのです。日本でゲノム医療のようなものをつくれば、アジア人同士のゲノムの方が白人とアジア人よりも近いのです。欧米で開発したゲノム技術はなかなかアジア諸国には導入しにくくて、自国に合うように一回カスタマイズしないといけないけれど、日本で開発したものははるかに導入しやすいという例が、ゲノムではしばしばあって、一番分かりやすい例なのですが、自然環境でもそうなのです。そういう意味で、日本で開発した小水力発電の技術はアジアのモンスーン地帯、ベトナムやフィリピン、タイやインド...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査(1)目的と潜水艦史
海底に突き刺さる旧日本海軍の潜水艦「伊58」を特定!
浦環

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
『貞観政要』を読む(1)長期政権を目指す者の必読書
北条政子も愛読した長期政権のバイブル『貞観政要』
田口佳史
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
プロジェクトマネジメントの基本(2)プロジェクトの複雑性とマネジメント
コスパが鍵!? 顧客満足につながる品質マネジメントとは
大塚有希子