赤字は罪悪である―経営者としての信念と覚悟
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「もうからなければ駄目」という信念で数々の改革を断行
赤字は罪悪である―経営者としての信念と覚悟
経営ビジネス
小林喜光(東京電力ホールディングス株式会社 取締役会長)
赤字は罪悪である。三菱ケミカルホールディングス社長として、いくつもの重大な経営改革を推進してきた小林喜光氏の方針は明確そのものだ。このぶれない方針を軸に行ってきた企業経営の核心に迫る言葉の数々を紹介する。
時間:7分46秒
収録日:2014年9月1日
追加日:2015年4月1日
≪全文≫

●覚悟をもっての再構築


―― 日本のような農耕民族型の湿っぽい組織を転換するときのエネルギーは、大変なものがありますね。デュポンのように、「手がけるのは3分野だけ」というような組織改革は、日本では非常にやりにくいですよね。

小林 やりにくいです。

―― その中でずっとやってこられたのはすごいですね。

小林 いや、いや。今でもいろいろと言う人は多いですからね。要は、儲けることよりも、「まず会社にいる存在そのものを大切にしてください」というようなことを言うわけではないですか。「俺を殺す気か。俺は今までの歴史をこの会社を残したい」という老人もいれば、若い人は若い人で、「この会社に入って、少しうまくいかないからといって、私もすぐクビですか?」と、強烈な目が訴えてきますからね。

 そういう中で、「いや、違う。儲からなければ駄目だ」という形でやるのは、それなりの覚悟がいりますね。


●グローバル社会を戦い抜いていくための生命科学研究所クローズ


 今から振り返れば、2007年に僕が社長になって、2008年3月に「三菱化学生命科学研究所をクローズする」と言ったことがあったのです。この研究所は、もう38年ぐらいやってきて当社の象徴的な研究所でした。大学教授を100人以上、150人は出していましたし、当時は毎年30~40億を使ってやってきたのです。

 ですが、累積すれば1000億以上使って、はっきり言ってアプリケーションは何も出きていなかったのです。ステータスというか、いわゆる民間企業のベーシックリサーチをやるという意味で、40年ほど前から「ライフサイエンス」という言葉を掲げて、それを非常に精神的なバックグラウンドのようなものにしていました。

 しかし、理化学研究所なり産業技術総合研究所が毎年500億から1000億のお金を使ってやっており、世界では5000億ぐらい使ったライフサイエンスの研究所もある中で、やはりこれはどう見ても中途半端でした。この慈善事業のような、相撲取りを後援するタニマチのような世界をいつまでもやるのか? と考えました。「立派に儲かっているならいいけれども、大して儲かっていないのに」というような思いが強くなってきたのです。

 社員として200数十名の研究者がいたのですが、研究所の講堂に集めて「これでクローズする」と言ったときは、やはり怨嗟(え...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
行動経済学とマーケティング(1)「行動経済学」とは何か
人間はそれほど合理的ではない…行動経済学の本質に迫る
阿部誠
イノベーションの本質を考える(1)イノベーションの定義
イノベーションの定義はパフォーマンスの次元が変わること
楠木建
日本企業の弱点と人材不足の克服へ(1)膠着する日本経済の深層
日本経済の行き詰まりをもたらした2つの大きな理由とは
西山圭太
キャリア転換で人生を成功させる方法(1)2つの大きな潮流
なぜ40歳でキャリアについて一度考え直す必要があるのか
為末大
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治

人気の講義ランキングTOP10
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担
日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い
養田功一郎
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
「アカデメイア」から考える学びの意義(2)プラトンの学園アカデメイア
プラトン「アカデメイア」の本質は自由な議論と哲学的探究
納富信留
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(4)百年後の日本人のために
百年後の日本人のために、共に玉砕する仲間たちのために
門田隆将
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子