インドの宗教では「世界に根本法則がある」と信じられており、それを知ることが素晴らしいことなのだとされていた。バラモン教やヒンドゥー教は、その根本法則を探求するのは特権階級のバラモンだと限定した。それに対し、仏教はカーストにかかわらず、志ある者は誰でもが出家して真理を覚ることができるとした。その違いが、仏教が普遍宗教となった理由である。さらに、一神教であるキリスト教が、教会によって定められた決まりに従う「教義(ドグマ)の宗教」であるのに対し、仏教は各自が世界の理を理解し追究する「覚りの宗教」だという。それはどういうことなのだろうか。仏教とキリスト教との本質的な違いについて解説していく。(2026年5月16日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全6話中第2話)
※司会者:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
≪全文≫
●仏教はなぜ普遍宗教になったか…バラモン教との「共通点と相違点」
―― それ(日本の神と天皇についての根本ポリシー)を前提としつつ、それがいかに日本ならではかを明らかにするためにも、まずは仏教とはどういうものだったのかを是非お聞きしたいと思います。
橋爪先生は、『ゆかいな仏教』(サンガ新書)という著書で大澤真幸先生とのご対談を通して非常に分かりやすく仏教の解説をされています。これに続きまして、『続・ゆかいな仏教』(サンガ新書)という著書も出されております。こちらなども元に、まずは仏教についてお聞きしていきます。
まず1つ目は、「仏教は普遍宗教である」ということです。これは神道とは違うということになると思いますが、ただ、そうは言いながら、いわゆるヒンドゥー教の土壌から生まれてきた仏教が、なぜ普遍宗教になったのかというところからお聞きしたいのですが、いかがでしょうか。
橋爪 ヒンドゥー教も仏教も大体同じようなものです。80パーセントか90パーセントは同じもので、少しだけ違うのです。だから、まずヒンドゥー教と仏教をひっくるめてインドの宗教ということでいうと、インドには宗教はあるけれど、日本人の想像を絶しているのですね。
どういうことを言っているかというと、この世界には「根本法則」があって、それによってこの世界は成立し、それによってこの世界は動いているのだと。あなたたちには分からないでしょう。(でも)よく考えると、それが分かるのだ。それが分かるのは素晴らしいこと。こういう考え方なのです。
その根本法則にはいろいろな名前がついている。仏教の場合だったら、ダルマとか、法とか、そういう名前がついています。それを理解して「分かりました」という状態になるのは素晴らしいことなのですが、それを「仏になる」といいます。仏はその根本法則を分かってしまった人間のことです。
この根本法則とは何かというと、私はあまりよく分からないのですが、素粒子物理学のようなものです。素粒子物理学というと、クオークとか、ひも理論とか、いろいろあるでしょう。あれは何をやっているかというと、この世界がどのように出来上がっているかという根本法則を明らかにしようとしているのです。
それは分かるけれど、その根本法則がどういうものかは、なかなか分...