根本博は復員後、かつての恩義に報いるため台湾へと渡り、金門島の戦いで中国共産党の進出を食い止めた。根本は大酒飲みでユーモアがあり、なによりも部下に信頼された、まさに名将である。ソ連の侵攻から日本を守った樋口季一郎と同様に、情報将校としての卓越した見通しのもと、保身を捨てて大義のために一歩前へ踏み出した根本。自らの信念に従って歴史の地図をも変えた男たちの決断と行動には、現代の私たちが学ぶべき多くの教訓が提示されている。(全5話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
≪全文≫
●根本博は大酒飲みでユーモアがあり部下に信頼された、まさに名将
―― 人物としては、根本博はどういうタイプの方だと思われますか。
門田 もう大酒飲みで、人がよくて、博識なわけです。お嬢さんが、「世の中のことで知らないことがないぐらい、いろんなことを知っている」「世界中のことを知っていて、ものすごくいろんなことを知っている父でした」と言ってくれました。彼のことをいろいろな人が書いているのですけれど、とにかくユーモアがあるわけです。
―― 釣り竿を持って帰ってくるとか(笑)。
門田 釣り竿も、行くときに持っていったのだから、帰るときも持っていなければということで(笑)、三年ばかり釣りに行っていたよと。
早坂 大きな釣果がありましたよね(笑)。
門田 とにかくすごく面白い。上官の奥さんが根本のことを書いているものがあります。それには、「もう何でもおいしそうに食べてくれる」「もう何を出しても、こんなにおいしそうに食べてくれる人はいない」と。愉快で、しかも酒をいくら飲んでも変わらない、大酒飲みです。酒が好きで好きでたまらない人ですから。だから、ご婦人方にも人気があって、部下にももちろん人気がある人です。
―― 先ほどお話があったように、いざとなったら「俺は行く」「爆弾を持っていけば解決だ」というぐらいの人ですから、それは部下にも信頼されるでしょうし。
門田 そういう意味で、名将でしょうね。
早坂 金門島の戦いがなかったら、あのあたりの地図もガラッと変わったわけですね。
門田 と言うより、台湾はなかったかもしれません。中華人民共和国に(なっていたかもしれない)。
早坂 戦前の日本の一つの悪夢は中国大陸の共産化です。それを防ぐために、必死になって知恵を出しあって戦ったわけです。実際に戦後に中華人民共和国が樹立されて、(もしあの時、勝っていなかったら)それがそのまま台湾まで行っていたでしょう。
門田 だから、殲滅戦のどこがすごいかというと、膠着状態に入ったわけじゃないですか。ジャンク船が焼き払われてしまったわけですが、共産党には海軍がないですから、それで膠着状態に入ったところで、翌年(1950年)、朝鮮戦争が勃発するのです。それで太平洋艦隊がこちらに来てしまったわけです。アメリカの太平洋艦隊が、朝鮮戦争が勃発したので、こちらに来てしまったから、(中国)共産党...