仏教とキリスト教を補助線に、西洋やアジアの宗教と比較しながら「日本とは何か」という根本的な問いを深く考えていくシリーズ講義。第1話では、神道を切り口にして本居宣長の『古事記伝』を引きながら「カミ」と天皇の関係について解説する。神(カミ)とは何か――人間を超越して実在性が高い一神教の「神」、同様に実在性の高い世界の古代文明の多神教の神に対し、日本の「カミ」は自然や現象に対する人間の主観的体験に根ざす曖昧模糊なものだと指摘する橋爪大三郎氏。こうした日本特有のあり方を象徴するのが、「天皇」の存在である。ではなぜ、天皇は大切なのだろうか。(2026年5月16日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全6話中第1話)
※司会者:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
橋爪大三郎(社会学者/東京工業大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
2.キリスト教は教義の宗教、仏教は覚りの宗教…仏教はなぜ普遍宗教か
2026年8月25日配信予定
3.「覚り」「因果」「空」とはどういうものか…仏教の本質と変遷
2026年8月31日配信予定
4.実は日本人は「仏教」も「先祖崇拝」も真面目に考えなかった?
2026年9月1日配信予定
4.実は日本人は「仏教」も「先祖崇拝」も真面目に考えなかった?
2026年9月1日配信予定
5.世界は「原則」でできているが、日本は「原則はなし」にする
2026年9月7日配信予定
6.漢字と理性と想像力…いま日本人が考えるべきこととは?
2026年9月8日配信予定
時間:13分01秒
収録日:2026年5月16日
追加日:2026年8月24日
収録日:2026年5月16日
追加日:2026年8月24日
≪全文≫
●日本の神道とは何か
―― 皆さま、おはようございます。
(会場:おはようございます)
本日は橋爪大三郎先生に、仏教とキリスト教から照らし出す日本の宗教というテーマでお話をいただきます。仏教を中心にキリスト教、神道との比較をしながら、そこから浮かび上がってくる「日本とは何か」というお話になってくるかと思います。いろいろな宗教の原理なども踏まえて、どういうことがいえるのかというところで、橋爪先生、どうぞよろしくお願いいたします。
橋爪 よろしくお願いします。
―― 最初に日本における宗教について考える上で、まずは神道について解説いただいてから、そことの比較で仏教やキリスト教について考えていきたいと思います。
先生がお書きになっていたところですが、まず神道でいいますと、天皇は神々とともにあって、祭祀者であったというところと、それによって人々を統合してきたというところがあると思います。神道はそもそも日本にとってはどういう宗教だったのでしょうか。
橋爪 日本にはもともとあったものです。でも、古いことは分からない。文字がないから、記録がない。ということで、どんなものか、はっきりしたことは分かりません。
記録というと、卑弥呼がどうのこうのというのは中国側の記録です。200字ぐらいのほんの短いテキストに日本のことが書いてあったけれど、卑弥呼が宗教的祭祀者のような者で、(当時、日本には)多くの国々があってそれを束ねていたということです。女性で、娘さんもいた、というようなことが書いてあるのですけれど、そのあとのことは全く分からない。
いろいろな説があります。これ(卑弥呼)が大和朝廷の元ではないか。邪馬台国が九州にあったとか、いや奈良にあったはずだとか、いろいろあるのですけれど、よく分からないのです。
途中の5世紀ぐらい(の記録が)全然ない。古墳とか、発掘したら刀が出てきたとか、いろいろありますが、大事なことは分からない。次の文字記録は7世紀になってしまうのですけれど、『古事記』『日本書紀』『風土記』、それから『万葉集』、こういうものが一番古くて、そこから後もいろいろと記録はあるのですけれど、そこまでプッツンと切れている。『古事記』『日本書紀』にはいろいろ書いてあるけれど、信用できるかという問題がある。
...
●日本の神道とは何か
―― 皆さま、おはようございます。
(会場:おはようございます)
本日は橋爪大三郎先生に、仏教とキリスト教から照らし出す日本の宗教というテーマでお話をいただきます。仏教を中心にキリスト教、神道との比較をしながら、そこから浮かび上がってくる「日本とは何か」というお話になってくるかと思います。いろいろな宗教の原理なども踏まえて、どういうことがいえるのかというところで、橋爪先生、どうぞよろしくお願いいたします。
橋爪 よろしくお願いします。
―― 最初に日本における宗教について考える上で、まずは神道について解説いただいてから、そことの比較で仏教やキリスト教について考えていきたいと思います。
先生がお書きになっていたところですが、まず神道でいいますと、天皇は神々とともにあって、祭祀者であったというところと、それによって人々を統合してきたというところがあると思います。神道はそもそも日本にとってはどういう宗教だったのでしょうか。
橋爪 日本にはもともとあったものです。でも、古いことは分からない。文字がないから、記録がない。ということで、どんなものか、はっきりしたことは分かりません。
記録というと、卑弥呼がどうのこうのというのは中国側の記録です。200字ぐらいのほんの短いテキストに日本のことが書いてあったけれど、卑弥呼が宗教的祭祀者のような者で、(当時、日本には)多くの国々があってそれを束ねていたということです。女性で、娘さんもいた、というようなことが書いてあるのですけれど、そのあとのことは全く分からない。
いろいろな説があります。これ(卑弥呼)が大和朝廷の元ではないか。邪馬台国が九州にあったとか、いや奈良にあったはずだとか、いろいろあるのですけれど、よく分からないのです。
途中の5世紀ぐらい(の記録が)全然ない。古墳とか、発掘したら刀が出てきたとか、いろいろありますが、大事なことは分からない。次の文字記録は7世紀になってしまうのですけれど、『古事記』『日本書紀』『風土記』、それから『万葉集』、こういうものが一番古くて、そこから後もいろいろと記録はあるのですけれど、そこまでプッツンと切れている。『古事記』『日本書紀』にはいろいろ書いてあるけれど、信用できるかという問題がある。
...