日本人が知らない自由主義の歴史~後編
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
計画経済が失敗する理由…ミーゼス、ハイエクの鋭い指摘
第2話へ進む
ハーバート・スペンサーとダイシー…20世紀の危機の予言者
日本人が知らない自由主義の歴史~後編(1)ニューリベラリズムへの異議
柿埜真吾(経済学者/思想史家)
20世紀になると、古典的リベラリズムはニューリベラリズムに取って替わられるようになる。だが、そのニューリベラリズムに「異議」を唱える動きが登場する。それを唱えた代表的人物が、ハーバート・スペンサーとA・V・ダイシーだ。彼らは、ニューリベラリズム的なあり方に警鐘を鳴らすとともに、20世紀の危機も予見していたのである。この2人の主張はどういうものであったのかを見ていこう。(全13話中1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分36秒
収録日:2022年7月25日
追加日:2023年7月14日
≪全文≫

●「ニューリベラリズム」を警戒する声


―― 皆さま、こんにちは。本日は柿埜真吾先生に「日本人が知らない自由主義の歴史 後編」ということでお話を伺いたいと思います。柿埜先生、どうぞよろしくお願いいたします。

柿埜 よろしくお願いいたします。

―― 前編の前回では、「自由主義の歴史」ということで、古典的なリベラリズムからニューリベラリズムへと移っていく過程をご説明していただきました。後編が始まるにあたって、前編の内容を簡単にご説明いただくと、どのようなイメージになりますか。

柿埜 自由主義はもともと、個人の選択の自由を重視するための政治制度をつくろうという思想で、経済的にも自由な社会を作ろうという市場経済重視の考え方でした。

 この古典的な自由主義が途中から、政府が介入していろいろな社会福祉のようなものをやったほうがいいのではないかという思想に、だんだんと変わっていく。これが「ニューリベラリズム」です。20世紀になると、特にニューリベラリズム的な発想に古典的リベラリズムは取って代わられるようになってきたという話です。

―― 先ほど先生にお伺いしていますと、普通の自由主義の教科書(特に日本の場合)は、だいたいこの辺りの話(前編)で終わりだということです。けれども実は、その後が大事だということですね。

柿埜 そうです。日本で一般的なリベラリズムの説明は、「古典的自由主義はダメだった。それに代わって、ニューリベラリズムという素晴らしいものが出てきた。その上で、現代のリベラリズムとはこういう考え方だ。再分配をとにかくたくさん行わなければいけない。国が全部、行わなければいけないのだ」というところで普通は終わってしまう。実はそれが全てではありません。それに対抗する重要な潮流がきちんとある、というのが今日(シリーズ後編)の話になります。

―― しかも、特に世界各国で見た場合はかなり強い勢力もあるので、その部分が分からないと、日本人も「自由」というものが理解できないということですね。

柿埜 そういうことです。

―― では、さっそく後編にいきたいと思います。今、先生がおっしゃったように、ニューリベラリズム(「政府が積極的に介入すべきだ」という意見)に対して、異議申し立てをする思想が出てくるということです。

柿埜 もともとのリ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦