日本人が知らない自由主義の歴史~後編
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ノージック『アナーキー、国家、ユートピア』…最小国家論
日本人が知らない自由主義の歴史~後編(11)ノージックの「最小国家論」
哲学と生き方
柿埜真吾(経済学者/思想史家)
リバタニアニズムの古典としてノージックの『アナーキー、国家、ユートピア』を紹介する。彼は、ニューリベラリズムの古典であったロールズの『正義論』を批判した人物だ。ロールズは「再分配は正義だ」と説いたが、ノージックは「再分配が正義とは本当か」と疑問を出したのだ。今回は、ロールズとの比較を通して「最小国家論」というノージックの発想を詳解するとともに、彼の本の評価のポイントを解説する。(全13話中11話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分13秒
収録日:2022年7月25日
追加日:2023年10月6日
≪全文≫

●国家はそもそも必要なのか


―― では続きまして文献編として、次はノージックの『アナーキー、国家、ユートピア』ですね。

柿埜 これは先ほど出てきたロールズに対する強烈なアンチテーゼをぶち上げた人です。

―― ロールズの『正義論』は1971年でした。こちらが1974年ですから、ちょうどその直後に書かれています。

柿埜 そうなのです。ロールズが正義という話をしたのに対して、「それは正義ではないだろう」というのが、このノージックの主張です。

 ノージックはハーバード大学の哲学者で、どちらかというと、いわゆるリベラルのエスタブリッシュメントの間に生きていた人ですから、彼がこの本を出したことは衝撃をもって受け止められました。彼はロールズと同じように、「社会契約論で話をしてみようではないか」というわけです。

―― あえて行ったわけですか。

柿埜 というか、彼自身、社会契約論的な発想に共感しているのです。だけれども、出てくる結論は全然違うわけです。

 そもそも社会契約論を考える上で大事なのは、「国家など要るのか」という話だったのです。ロールズの場合は、国がどうするかということが最初から前提になっていて、国が全部を持っているような発想だったわけですけれども、「そもそも個人の権利が最初にあるよね」というのがノージックの発想です。

 要するに、ノージックは「個人の権利があって、その権利を持った個人が果たして国家など必要だと考えるだろうか」というところから始まるのです。そして、ノージックが導き出すのが「最小国家論」という考え方です。要するに、人々の所有権や生命、財産の権利といった権利を侵害せずに国家を設立することはできるだろうか、と考えるわけです。

 そうするとノージックは(いろいろと議論しているのですが、考えていくと)、「自分の安全を守るために国をつくる。国に国防を任せる、治安維持を任せる、というところまでは納得できるだろう。だけれども、それ以上になったら、納得できるような国家はできない、個人の権利を侵害せずにきちんとした国をつくることはできない」というわけです。

 例えば国が非常に高い税金を取って、国が望ましいと思っている公共事業に使うとしても、その税金は個人にとって役に立つものだとは限らない。そういった役に立つとは限らな...

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