日本人が知らない自由主義の歴史~後編
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負の所得税、教育バウチャー…フリードマンの格差是正策
日本人が知らない自由主義の歴史~後編(10)フリードマンが考える福祉政策
哲学と生き方
柿埜真吾(経済学者/思想史家)
フリードマンが“悪しき市場原理主義者”のようにいわれるのは誤解で、彼は政府介入の必要性をきちんと認めていた。そのために提唱した代表的な政策が「負の所得税」と「教育バウチャー」である。この2つを詳しく解説するとともに、フリードマンの思想を振り返る。(全13話中10話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分38秒
収録日:2022年7月25日
追加日:2023年9月29日
≪全文≫

●現行の生活保護制度の問題点


―― では、それ(政府が介入したほうがいいということ)が具体的にどういうことかということですが、「負の所得税」とはどういった考え方ですか。

柿埜 「負の所得税」は、現行の生活保護の代わりとなる制度として提案されています。生活保護は、所得の非常に低い人が受けることができます。ところが、いったん生活保護を受け始めると、むしろ働かないほうが得になってしまう制度になっているのです。

 生活保護で保障される生活水準は一定です。どういうことかというと、全く働けない、働いていない人は所得がゼロで、生活保護を受け取るわけですね。ですが、この人が、例えば新しい仕事を見つけたとします。あるいは、自分で内職を始めて、(仮に)インターネット上で漫画のようなものを描いてみたらヒットして、収入が入ってくるようになった、そういったことがあったとします。これは、とても喜ばしいことのはずです。

 ところが、所得がゼロから、この方の描いた漫画が少し売れ始めたということで所得が少し上がったとします。そうすると、そのことを申告すると生活保護の給付がそのぶん減ってしまうわけです。これは、ものすごくやる気をそがれますよね。頑張って働いたのに、実際は所得が全く増えないわけではないのですが、日本の制度では信じられないほど勾配が緩くなっています(他の国もそうなのですが)。

 せっかく自分が何か新しいことを思いついて働くようになっても、あるいは会社に就職できて働けるようになっても、収入が入ってきたら、そのぶん給付が減ってしまう。それであれば、働くことがある意味で馬鹿馬鹿しくなってしまいます。一生懸命考えて(漫画を)描いたのに、あるいは一生懸命働いたのに、「もらえる額が減ってしまうではないか」と。

 しかも、さらに悪いのは、生活保護の水準を超えた瞬間に、生活保護は打ち切られてしまうことです。(生活保護を)打ち切られたら――例えば、日本の場合は(生活保護を受けているときは)家賃なども全部補助してもらっているし、公共料金などはタダになっているわけですけども――、そういうものが一気に有料になるわけです。そうすると、生活保護を抜けた瞬間はむしろ、生活保護より収入が下がってしまう。そして、もしかしたら(その後)失業するかもしれない。私の先ほ...

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