日本人が知らない自由主義の歴史~後編
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ロールズ『正義論』…無知のベール?マキシミン原理?
日本人が知らない自由主義の歴史~後編(6)ロールズ『正義論』
哲学と生き方
柿埜真吾(経済学者/思想史家)
ニューリベラリズムとリバタニアニズムの基本として押さえておくべき文献について解説する今回。まずニューリベラリズムの古典とされているのが、ロールズの『正義論』である。中でも注目なのは「無知のベール」と呼ばれる理論で、「自由原理」と「格差原理」によってうまれたものが正義にかなった制度であるという。これはいったいどういうことなのか。『正義論』で書かれた考え方や内容を読み解くとともに、その批判にも迫っていく。(全13話中6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:15分06秒
収録日:2022年7月25日
追加日:2023年8月18日
≪全文≫

●ニューリベラリズムを基礎づけたロールズの『正義論』


―― 次に文献編ということで、特にニューリベラリズムとリバタリアニズムが、それぞれどのような主張をベースにしているのかを読み解いていきます。

 最初に、ニューリベラリズムの古典として先生に挙げていただいたのが、ロールズの『正義論』という本です。これはどのような本になるのですか。

柿埜 このロールズの『正義論』という本は、ニューリベラリズムの流れを汲んでいる、アメリカのリベラリズムの古典と言える本です。これはベンサムの功利主義に基づく自由放任的な自由主義に対する反論というか、それを否定して、ニューリベラリズム的な発想を(ここではニューリベラリズムとはいわず、むしろリベラリズムという言い方を彼はしていますけれども)哲学的に基礎づけた本です。

 ベンサムの功利主義は、それ以前の社会契約論に基づいた理論(やや神学的な発想が入っているもの)に対し、「個人の幸福、効用に基づいて社会を考える」という合理的な発想で自由主義社会を正当化したものでした。それに対してロールズは、「いやいや、社会契約論はほんとうの正義や自由などの問題を考える上では、むしろ大事なのだ」と言って、ある意味でそちらに戻るところが面白い点です。

 この社会契約論をロールズが考えるにあたって前提にしているものは、「善に対する正義の優先」といわれる発想です。

 これはどういうことかというと、いろいろな望ましい「目標(善)」が人間にはあるわけです。だけど、どれかが絶対的で、それを押し付けることはよくない。そういうことをすると、いろいろな善のうちの一つだけを取ってしまって、他を抑圧することになってしまう。だからそうせずに、いろいろな目標を人々が追求できるように、制度をつくらなければいけない(これは正義であるわけです)。これをつくらなければいけないというのが「善に対する正義の優先」です。

―― これは、要は「いろいろな善があるのだから、いろいろな人たちがそれぞれの善を追求する権利を尊重する。それが正義である」というイメージですね。

柿埜 ですから、ここは先ほど(第5話)のノーラン・チャートの図ですと、多様性を認めるというリベラルの発想なわけですね。個人の自由は大事...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
おもしろき『法華経』の世界(1)法華経はSFだ!
法華経はSFだ!…心を元気にしてくれる法華経入門
鎌田東二
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
経験学習を促すリーダーシップ(4)成功を振り返り、強みを伸ばす
なぜ強みが大事なのか?ドラッカー、西田幾多郎の答えは
松尾睦
大人の学び~発展しつづける人生のために(1)「Unlearn(アンラーン)」とは何か
見方を変える!生き方を変える!そのためのアンラーン
為末大
「集権と分権」から考える日本の核心(7)人間の性と今後の「集権と分権」
ロシアを見れば明らか…正義を唱えても優るのは人間の性
片山杜秀
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
未来を知るための宇宙開発の歴史(11)地球にない宇宙資源を活用する時代へ
月で生活できる!? 地球では入手困難な宇宙資源の獲得へ
川口淳一郎
編集部ラジオ2025(22)長谷川眞理子先生の「子育て」講義
生物学からわかる「ヒトの配偶や子育て」で大切なこと
テンミニッツ・アカデミー編集部
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(5)現代社会の問題点と親性脳のスイッチ
親も子もみんな幸せになる方法…鍵は親性脳のスイッチ
長谷川眞理子
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑