日本人が知らない自由主義の歴史~後編
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
新自由主義(ネオリベラリズム)への大誤解と言いがかり
日本人が知らない自由主義の歴史~後編(3)ネオリベラリズムの登場と誤解
哲学と生き方
柿埜真吾(経済学者/思想史家)
1929年の大恐慌で市場経済は終わったかに見えたが、「市場経済や自由主義が悪かったわけではない」という立場が現れ始める。「ネオリベラリズム(新自由主義)」の登場である。現在では、ネオリベラリズムを超自由放任主義、市場経済至上主義のように捉える向きも少なくないが、それは誤解であると柿埜氏は言う。ネオリベラリズムの本来的意味とは何か。また、「ミーゼス、ハイエク、フリードマンはネオリベラリズム」というのも大変な言いがかりでしかない。(全14話中3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14分43秒
収録日:2022年7月25日
追加日:2023年7月28日
≪全文≫

●「大恐慌」で本当に市場経済は終わった?


―― そのような角度、そのような立場からニューリベラリズムへの異議申し立てがなされていきました。戦後まで俯瞰した形になりましたが、少し時代は戻りまして、戦前の時期にもう一つ大きかったのが「恐慌」です。

 先ほども少し話が出ましたけれども、恐慌が起こって完全に、市場経済の自由放任はもうどうにもならないのではないかという意見が根強く広がる形になったということですね。

柿埜 「大恐慌」は市場経済がほんとうに終わった証拠だと――その前からいろいろ非難されてはいたのですが――だいたいの人は、そう考えたわけです。

 でも、「ほんとうにそうなのか。自由主義はほんとうにダメなのか」と思った人たちがいました。先ほども話が出ましたが、「ネオリベラリズム」「新自由主義」と言われるのは、実はこの時に出てきた人たちです。

―― なるほど。

柿埜 彼らの主張は何だったか。「大恐慌で確かに今の経済は破綻したかもしれない。けれども、これは自由主義が間違っていた、市場経済が間違っていたということではない。適切な規制を政府がしなかったからこうなったのだ。介入すべきときには介入しなければいけない。だけど、介入してはいけないときは、介入してはいけないのだ。なんでもかんでも国が介入して全部をやればいいというものではないだろう」ということを彼らは指摘するわけです。

 だから、当時出てきた国家主義的な発想や社会主義的な発想に対して、「自由放任ではダメだけれども、自由放任でも国家主義でもないバランスの取れた場所があるはずだ」というものが、「ネオリベラリズム」といわれる考え方なのです。

 私たちはなんとなく「ネオリベラリズム」という名前を聞くと、「あくなき市場原理の追求」「利益至上主義」「恐ろしい〇〇」「貪欲の〇〇を肯定する金儲け主義」など、いろいろ言われています。

―― 今であれば、そういうイメージが強いですね。

柿埜 全く違います。本当のネオリベラリズムを唱えた思想家は、むしろ「自由放任ではダメだ」と言っている人なのです。自由放任ではダメだけど、国家主義でもダメだと。

―― 全部を計画経済で行うのはよくない。その危機に至らないように必要な介入はしなければいけないけれども、全てに介入するわけではないと。

柿...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
【入門】日本仏教の名僧・名著~総論(1)名僧の原著に触れる意味
「文は人なり」――原文を読んで名僧の思想の息吹に触れる
賴住光子
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(1)言葉の正しさとは
「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ
中島隆博
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
おもしろき『法華経』の世界(1)法華経はSFだ!
法華経はSFだ!…心を元気にしてくれる法華経入門
鎌田東二
「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司

人気の講義ランキングTOP10
経験学習を促すリーダーシップ(4)成功を振り返り、強みを伸ばす
なぜ強みが大事なのか?ドラッカー、西田幾多郎の答えは
松尾睦
大人の学び~発展しつづける人生のために(1)「Unlearn(アンラーン)」とは何か
見方を変える!生き方を変える!そのためのアンラーン
為末大
「集権と分権」から考える日本の核心(7)人間の性と今後の「集権と分権」
ロシアを見れば明らか…正義を唱えても優るのは人間の性
片山杜秀
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
未来を知るための宇宙開発の歴史(11)地球にない宇宙資源を活用する時代へ
月で生活できる!? 地球では入手困難な宇宙資源の獲得へ
川口淳一郎
編集部ラジオ2025(22)長谷川眞理子先生の「子育て」講義
生物学からわかる「ヒトの配偶や子育て」で大切なこと
テンミニッツ・アカデミー編集部
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(5)現代社会の問題点と親性脳のスイッチ
親も子もみんな幸せになる方法…鍵は親性脳のスイッチ
長谷川眞理子
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑