日本人が知らない自由主義の歴史~後編
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戦後復興を実現した「ネオリベラリズム」がなぜ悪口に?
日本人が知らない自由主義の歴史~後編(4)戦後復興と「ネオリベラリズム」
柿埜真吾(経済学者/思想史家)
第二次世界大戦後の戦後復興期は、西ドイツやイタリアで「ネオリベラリズム」政策が実施され、その結果、両国とも大成功を収めた。両国の「奇跡の復興」を実現させたものこそ、「ネオリベラリズム」だったのである。そのネオリベラリズムの政策の内容とは、具体的にはどういうものだったか。また、実はだんだん「ネオリベラリズム」という用語は使われなくなっていったが、1990年代以降、悪口のレッテル貼りとして使われるようになったのは、なぜなのか。「本来のネオリベラリズム」路線の内実と、その後の「変な」使われ方に迫る。(全13話中4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分30秒
収録日:2022年7月25日
追加日:2023年8月4日
≪全文≫

●戦後の奇跡の復興を実現した「ネオリベラリズム」路線


―― 実際の政策を見ると、政府が大きくなりすぎない、政府を万能にはしない、だけれども市場に適切な介入をする、というのが戦後に出てきた自由主義的な流れであって、それが西ドイツ、あるいはイタリアの戦後復興の政策になります。実際問題、この時期に行われた西ドイツやイタリアの経済政策は「ネオリベラリズム」といっていいわけですね。

柿埜 そうですね、ネオリベラリズムです。のちのちネオリベラリズムというレッテルを貼られた人たちは、自分では「ネオリベラリズム」と名乗っていない人がほとんどなのですが、「ネオリベラリズム」と自分で名乗っていて実際に政治に携わった人たちは、後にも先にも、この時期の人たちだけです。

―― なるほど。

柿埜 戦後復興を担った西ドイツやイタリアの政治家、あるいはそれを支援した経済学者がそうです。

 ネオリベラリズムという思想の代表的な人は、(西)ドイツですとリュストゥという人が最初に言いだしました。リュストゥやレプケ、彼らと親しかったエアハルトです。

 エアハルトは経済学者でもあったのですが、のちに西ドイツの経済復興を担う経済大臣になり、首相にもなっています。

 このエアハルトが行ったことが、ほんとうの新自由主義(ネオリベラリズム)です。エアハルトはしばしば「社会的市場経済」という言葉を使ったのですが、この「社会的市場経済」は今のドイツの考え方の基本になっているもので、これが実は本来のネオリベラリズムとイコールといっていいものです。

―― ここに先生が整理してくださっていますが、「政府が介入しつつ、独禁法も、社会保障(福祉)もやって、自由市場をうまく機能させる。これで価格メカニズムは維持していく。ただし物価統制などは撤廃し、自由貿易を推進する」、そういった動きだということですね。

柿埜 エアハルトが強調したのは、一つは独禁法を行って、市場経済を競争的にするということ。要するに、市場経済が独占的になるのを防ぐことに重点を置いているわけです。

 彼がもう一つ、重点を置いているのは、自由な貿易をして、国外ときちんと取引をするということです。これは要するに、保護貿易というものはドイツがしばしば国粋主義と結びついていて、ナチスのようなものにつながった...

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