日本人が知らない自由主義の歴史~後編
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
自由主義、保守主義、全体主義…真の社会全体の利益とは?
日本人が知らない自由主義の歴史~後編(13)「自由な社会」を守るために
柿埜真吾(経済学者/思想史家)
現代では「保守主義と自由主義(リベラル)は対立する」と思っている人も多い。だが本来、自由主義と保守主義は対立する概念ではない。そして、本当に自由主義と対峙するものは全体主義である。最終話である今回は、「保守主義の父」といわれるイギリスの政治家・エドマンド・バークを取り上げて、自由主義との関係について解説するところから始まる。実は、バークはトーリー(保守党)ではなく、ウィッグ(自由党)のしかも改革派だったというのだが……。さらに、自由主義の概念についてのポイントをおさらいしながら、全体主義との対比、そして自由主義の「これだけは絶対に譲れない共通項」を挙げて、本シリーズ講義を締めくくる。(全13話中13話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分18秒
収録日:2022年7月25日
追加日:2023年10月20日
≪全文≫

●自由主義と保守主義は両立する考え方


―― そのような中で今、保守主義という言葉も出てきました。(そこで、このスライドで)本来の保守主義はどういうものか、また保守主義と自由主義はどのような関係かという興味深いご指摘をいただいています。

柿埜 ええ。保守主義というと、「自由主義と反対」「リベラルと保守は対立する」といった発想が非常に多いのです。特に日本の保守主義といわれる方々は、どうもそういった傾向が強いかなという気がします。ただ、保守主義と自由主義は本来、対立する概念ではないのです。

―― 違うのですね。

柿埜 「保守主義の父」といわれるのは、エドマンド・バークというイギリスの政治家で思想家だった人です。ですが、これは実は後世につくられた評価で、バーク自身は保守党(トーリー党)ではありません。その逆で、ウィッグ党(後の自由党)の、しかも改革派のメンバーだったのです。

―― 普通であればトーリーだと思ってしまいますよね。

柿埜 違うのです。この点は、ものすごく勘違いをされています。彼は実は、名誉革命後のイギリスの憲法にもとづく体制を擁護して、絶対王政と闘った人です。アダム・スミスを非常に尊敬していましたし、だから自由市場経済をとても支持している。保護貿易が支持されるような動きがあった時には、それを明確に反対しています。

 (また、)彼はフランス革命には確かに反対でしたが…。

―― これが、いわゆる保守主義的なところですね。

柿埜 そうなのです。けれども、アメリカ植民地の独立は支持しましたし、私から見ても「この人は自由放任主義すぎるだろう」というほど、実は自由市場経済を高く買っていた人です。「地主が貪欲であっても、まったく問題ない。市場経済がきちんとあれば、貪欲であればあるほど、むしろ小作人のためにもなるし、消費者のためにもなる。何が悪い」という主旨のことが、本当に書いてあります。

―― 本当の自由主義ですね。

柿埜 バークは反動的な思想家ではないのです。バークは伝統などそういったものをとても大事にした人で、伝統や慣習は確かにその人らしさの一部ですから、そういうものを大事にすることは自由主義に反しているわけでもないのですね。だから、バークは意識的にはむしろ自由主義者だったわけです。

―― このあたりの整理...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎