台湾の古寧頭戦役で共産党の侵攻を防いだ国民党軍の勝利の裏には、日本人・根本博の尽力があった。しかし、台湾統治の正当性を保ちたい当局の思惑や派閥争いにより、その存在は歴史から意図的に消し去られていた。戦後60年を経て取材に赴いた門田氏が現地の新聞で呼びかけて当時根本とともに戦った者たちの証言を次々と集めることができたことにより、ついに台湾国防部も根本を「救国の英雄」と認めるに至った。まさに消された歴史の真実を掘り起こす、激動のドラマを描いた第4話である。(全5話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
≪全文≫
●国民党軍の派閥争いと史実を隠し続けてきた台湾当局
門田 そうすると、ここですごいのは何かというと、湯恩伯が初めて勝ったことです。そうすると、湯恩伯の価値はバーンと上がります。それをさせないために、蒋介石と奥さんの宋美齢の大のお気に入りの陳誠という将軍がいて、台湾の行政を仕切っているわけですけれど、彼が金門島にやってきたのです。勝った途端にやってきて、新聞には陳誠のことがバーンと出たのです。
湯恩伯は蒋介石に嫌われていましたから、それでフェードアウトさせられます。湯恩伯は慶應病院で亡くなっていますが、がんになった時、台湾にいたくないということで、根本博が一所懸命に動いて、慶應病院を手配しました。だから、最期まで根本とは友情関係なのですけれども。
早坂 国民党軍の中にも、すごい派閥争い、勢力争いがあったわけですね。
門田 だから、向こうのいろいろな文献には、金門島で(勝利した)湯恩伯将軍(司令官)の名前が出てこないのです。胡璉(これん)という将軍ともう1人の2人の将軍だけの手柄になっている。もちろん、根本の名前も一切(出てこない、つまり)消されているわけです。なぜ消されているかというと、これは当然といえば当然です。
なぜかというと、国民党は台湾では(中国)大陸から来た人たちですから、今「外省人」と呼ばれています。(つまり)蒋介石とともにやってきた人たちは、「外省人」と呼ばれているのですけれど、その人たちがずっと台湾を支配したわけです。そうすると、外省人がずっと台湾を支配してきた根拠は何か、ということがあるわけです。
根拠とは? なぜ蒋介石が台湾を支配できるのか? その根拠は何もないですよね。ないけれど、あえていうならば、「共産化を防いだ」ということです。中国になっていないということは、金門戦争において中国共産党の支配を防いだわけです。それだけが、彼らが台湾を支配する根拠ですよね。
もしその最大の根拠が、日本人の手を借りて成功したのだということが明らかになったら、台湾統治の根拠が消えるじゃないですか。だから、そのために国民党はそのことを隠し続けるわけです。
それで、ものすごく隠し続けてきたので、私がこのことを(明らかに)しようとして、向こうの国防部と激しい闘いになったのです。それは何かというと、金門島に根本将軍はいませんと言われたのです...