本当のことがわかる昭和史《5》満洲事変と石原莞爾の蹉跌
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
列強に蚕食されていた中国で民族自決の気運が一気に高まる
第2話へ進む
放っておけば朝鮮はロシア領になりかねなかった
本当のことがわかる昭和史《5》満洲事変と石原莞爾の蹉跌(1)なぜ満洲が重要だったのか
渡部昇一(上智大学名誉教授)
昭和史にとって満洲問題が非常に重要だった。それを考えるためには、明治維新、そして日清戦争にさかのぼらなければならない。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第五章・第1回。 ※本項には該当映像がありません。
時間:9秒
収録日:2015年2月2日
追加日:2015年9月7日
≪全文≫
 本書の第一章で、東京裁判は日本の侵略戦争の始まりを満洲事変(昭和6年〈1931〉)だと断定して、半藤一利氏は、

 〈昭和史の諸条件は常に満州問題と絡んで起こります。そして大小の事件の積み重ねの果てに、国の運命を賭した太平洋戦争があったわけです。とにかくさまざまな要素が複雑に絡んで歴史は進みます。その根底に〝赤い夕陽の満州〟があったことは確かなのです〉

 と書いておられることを紹介した。

 同じ章で、満洲事変の遠因である張作霖爆殺事件が、通説としていわれている「関東軍の謀略」でない可能性があることも論じた。ただし、たしかに半藤氏がいわれるように、「昭和史の諸条件は常に満州問題と絡んで」起こっていることは確かである。

 なぜ、昭和史にとって満洲問題が非常に重要だったのだろうか。

 それを考えるためには、明治維新、そして日清戦争にさかのぼらなければならない。

 そもそも日本の明治維新は西洋列強の脅威からわが国を守るためのものであった。維新後の日本は当初、朝鮮や清国と手を結び、白人の植民地にならないように両国に近代化を求める道を模索するという考えであった。しかし清国は自らを中華とし、他を蛮夷とする中華思想から抜け出そうとしない。朝鮮もその華夷秩序から一向に抜け出そうとせずに、日本を蔑視する態度を取り続け、そればかりか清朝が動揺すると、あろうことかロシア勢力を自国に招き入れるような外交を展開した。

 日本としては自国を守るために、清と戦って因循固陋な華夷秩序を打ち破り、朝鮮を独立させなくてはならなかった。そのために戦われたのが日清戦争(明治27年〈1894〉~28年〈1895〉)である。

 日清戦争に勝利した日本は、清国と下関条約を結ぶ。この条約で清国は朝鮮の独立を認め、さらに日本に遼東半島、台湾全島、澎湖諸島を永久割譲し、賠償金二億両を払うことが決められた。このおかげで、朝鮮は初めて独立国となり、韓国皇帝と称することができたのである。

 しかし、この下関条約が結ばれた六日後に、ロシア、フランス、ドイツの三カ国が遼東半島を放棄するよう干渉してくる(三国干渉)。日本は涙を呑んでこの遼東半島を放棄することにした。

 しかし、この三国干渉は、西洋列強諸国が清国が日本に敗れた結果を目の当たりにして、清国を食い物にしようと群がりはじめた端緒にすぎなかっ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(3)古書店巡りからネット書店へ
ネット古書店で便利に買える時代…「歴史探索」の意義とは
中村彰彦
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新