本当のことがわかる昭和史《5》満洲事変と石原莞爾の蹉跌
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
満洲は別物―国際社会に第一に説くべきだったこと
本当のことがわかる昭和史《5》満洲事変と石原莞爾の蹉跌(7)崇高だった五族協和の理念
渡部昇一(上智大学名誉教授)
当時、国際社会に強調するべき点は、満州国はシナとは別物であるということに加えて、満洲国が掲げた「五族協和」の理念だった。日本人、漢人、朝鮮人、満洲人、蒙古人など諸民族の協調路線のことである。差別を排して、五族協和を実現するという理念は、まことに崇高なものだった。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第五章・第7回。
時間:4分15秒
収録日:2015年2月2日
追加日:2015年9月10日
≪全文≫
 改めて考えてみると、日本には全体を考えて、実際に全体を動かしうる人がいなくなったのである。

 国際連盟脱退で日本国内での人気を高めた松岡洋右は、昭和15年(1940)に第二次近衛文麿内閣の外相に就任するが、彼も幣原外交を批判し自主外交を主張したものの、英米に対抗するべく三国同盟路線を走り、さらにソ連を加えた四カ国同盟を構想するなど、また別の意味で危うい人だった。

 ヨーロッパでは、ロカルノ条約を破棄したドイツがあっという間にオーストリアを併合(昭和13年〈1938〉)し、チェコスロバキア領だったズデーテン地方を割譲(同年)させるなど、再び緊張が高まっていた。

 第一次世界大戦後の平和・緊張緩和の時代が終わり、国際的な軍拡競争と共産主義の脅威が広がり始めた世界の趨勢から見ると、日本が自存自衛を図るうえで最も正しい解は、やはり満洲事変であり、それが実際に成功を収めた。

 だからこそ、なおさら、なぜあのとき日本は満洲国の独立をイギリスやアメリカにうまく説明できなかったのか、本当に残念で仕方がない。

 繰り返し強調するが、ポイントは、満洲をシナの一部として見なしてしまっている西洋人たちに、「満洲は別物なのだ」ということをわからせられるかどうかだった。私も「リットン報告書」を注釈をつけながら精読したが(『全文 リットン報告書』〈ビジネス社〉)、リットン調査団も、満洲をシナの一部として見ていた。だから日本政府は、「満洲はシナではない」ということを、国際社会に第一に説くべきだったのである。

 もう一つ強調すべきは、満洲国が「五族協和」を謳う国だったことだろう。先にも述べた通り、ここでいう五族協和とは日本人、漢人、朝鮮人、満洲人、蒙古人など諸民族の協調路線のことである。この時代に「民族自決」が叫ばれたことはすでに紹介した。植民地の独立などに大きな影響を与えた理念ではあるが、しかし、それが極端なかたちに行きすぎて排他主義を帯びると、悲劇的な民族紛争を招いてしまう。これは現代の世界も直面している課題である。さらに、「民族自決」を利用して、国際共産主義運動は自らの勢力を拡大しようとした。その結果、共産主義独裁政権が世界各地に成立し、各国で虐殺などが次々と引き起こされたのは20世紀の悲しい教訓であった。その意味でも、差別を排して、五族協和を実現するのだという理念は...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断(1)日本海海戦・東郷平八郎
なぜ東郷平八郎はバルチック艦隊を対馬で迎え撃ったのか?
山下万喜
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
日本の財政と金融問題の現状(1)財政赤字の何が問題か
日本の財政は本当に悪いのか?将来世代と金利の問題に迫る
木下康司
心と感情の進化(1)そもそも「心と感情」とは何なのか
「心と感情」とは何か、行動生態学から考える大事な問題
長谷川眞理子