本当のことがわかる昭和史《5》満洲事変と石原莞爾の蹉跌
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
当時の国際社会では当たり前のことを日本はしなかった
本当のことがわかる昭和史《5》満洲事変と石原莞爾の蹉跌(5)満洲事変への批判を招いた幣原外相の罪
渡部昇一(上智大学名誉教授)
南京事件からの教訓を、幣原外相は生かそうとしなかった。満洲事変に至る過程をきちんと説明して、理解を求めれば、日本に批判が集まることはなかっただろう。だが、幣原外相は不拡大を唱えるばかりだった。それに対して、幣原外交にもはや聞く耳を持たない関東軍は粛々と行動したから、日本は「ダブルガバメント」だと批判され、受けなくてもよい不信の目を向けられることになった。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第五章・第5回。
時間:2分08秒
収録日:2015年2月2日
追加日:2015年9月7日
≪全文≫
 満洲事変(昭和6年〈1931〉9月18日)が勃発すると、詳しい経緯は他書に譲るが、満洲駐屯中の第二師団を中心とする約1万の兵力が、約27万の正規軍からなる張学良軍を追い払い、満洲を押さえた。

 陸軍中央には当初、政府の不拡大方針に従おうとする動きもあったが、結局は満洲の占領および満洲国の建設に着手した。幣原外相は満洲事変に対して徹底的に反対したが、政府も結局は満洲事変を追認し、満洲国の建国を後押しするようになる。

 そういう態度が日本政府に対する信用を大きく低下させた。

 そもそも、現地の居留民を守るために軍隊が出動するというのは、現在はもちろん当時の国際社会ではごくごく当たり前のことであった。義和団が居留民を襲った北清事変では、イギリス、アメリカ、ロシア、フランス、ドイツ、オーストリア、イタリア、日本の八カ国が連合軍を出動させているし、蔣介石率いる国民革命軍(北伐軍)が南京で居留民を襲撃殺害した南京事件(昭和2年〈1927〉3月)の折には、英米が軍艦から艦砲射撃を行ない、陸戦隊を上陸させている。

 実はこの南京事件の折、日本人も殺害され、英米からともに行動するように声を掛けられているのだが、対支協調を謳う幣原外相はそれに応じなかった。それどころか、警備していた日本軍人は反撃を禁じられたため、婦女子を含む日本人が暴行、凌辱、略奪されるのをただ見ているしかなかった。結局、このことで、シナは日本を侮るようになり、さらに日本人に対する暴行事件が増えたばかりでなく、英米からも「日本だけがいい顔をしようとしている」と不信を招くようになったのだ。

 その教訓を、幣原外相はまったく生かそうとしなかった。満洲事変に至る過程をきちんと説明して、理解を求めれば、日本に批判が集まることはなかっただろう。だが、幣原外相は不拡大を唱えるばかり。それに対して、幣原外交にもはや聞く耳を持たない関東軍は粛々と行動したから、日本は「ダブルガバメント」だと批判され、受けなくてもよい不信の目を向けられることになったのである。

 さらにいえば、関東軍は満洲を攻め取って領有したのではなく、最後の清皇帝・溥儀を迎えて満洲国を建国している。もともと満洲は満洲族の故地であり、これは当時の国際常識からいっても穏健な手法であったといえる。

 清朝復興を心から望んでいた最後の皇帝・溥儀が満洲...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断(1)日本海海戦・東郷平八郎
なぜ東郷平八郎はバルチック艦隊を対馬で迎え撃ったのか?
山下万喜
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
日本の財政と金融問題の現状(1)財政赤字の何が問題か
日本の財政は本当に悪いのか?将来世代と金利の問題に迫る
木下康司
心と感情の進化(1)そもそも「心と感情」とは何なのか
「心と感情」とは何か、行動生態学から考える大事な問題
長谷川眞理子