本当のことがわかる昭和史《5》満洲事変と石原莞爾の蹉跌
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
米英協調でつけこまれた幣原外交の大失敗
本当のことがわかる昭和史《5》満洲事変と石原莞爾の蹉跌(3)幣原外交の致命的失敗
渡部昇一(上智大学名誉教授)
日本国民と日本政府は、ベルサイユ条約からワシントン条約までの平和路線、すなわち幣原喜重郎が進めてきた外交路線を好み、議会もそれを支持した。ところが実際には、諸外国からはその協調姿勢につけ込まれ、結果として失点ばかりを重ねてしまうことになった。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第五章・第3回。
時間:6分16秒
収録日:2015年2月2日
追加日:2015年9月7日
≪全文≫
 日本もただ手をこまねいていたのではない。大正2年(1913)には、当時の辛亥革命(第二革命)の状況を見て、日本の三大財閥の一角だった三井は、日本政府とも連携をしつつ、満洲を買収する交渉を行なっている。だがこれは、交渉相手の孫文が第二革命の失敗で日本に亡命したため、実現しなかった。

 その後、中華民国は軍閥割拠の状況になるが、孫文の死後、国民政府を掌握した蔣介石が「北伐」を行ない、国民党が根拠地としていた広州から南京、上海、北京へと攻め上って中国統一に成功すると(大正15年〈1926〉~昭和3年〈1928〉)、今度は国民政府の外交部長の王正廷が「革命外交」を唱え出す。「中国は革命に成功したのだから、これまで結んできた一切の不平等条約を廃止できる」とする外交方針であった。明治維新後も、不平等条約改正のためにまじめに努力を重ねてきた日本からすれば、まったくとんでもない話であった。

 このような状況下で日本の外務大臣を務めていたのが幣原喜重郎であった。幣原は大正10年(1921)から始まったワシントン会議で外務次官として全権を務めたあと、加藤高明内閣(大正13年〈1924〉6月~大正15年〈1926〉1月)で外相に初就任。以来、第二次若槻礼次郎内閣(昭和6年〈1931〉4月~12月)までの多くの期間、外務大臣を務めていた。

 幣原外交は、先にも述べたように、ひたすら協調外交であった。もちろん、そのような外交を支えたものとして、ヨーロッパ大戦後に平和謳歌が国民全体の気分になっていたことや、「日本が世界の五大国の一つになった」という喜びがあったことは確かである。そういう世論の支持のもとに政党政治があり、幣原外交もあった。

 ところが、大正11年(1922)に成立したソ連が、国境を越えて国際共産主義運動を展開し始める。また日本人は当初、ワシントン条約(大正10年〈1921〉)やロンドン海軍軍縮条約(昭和5年〈1930〉)について、軍備を縮小し平和の理念を実現するのは良いことだと歓迎していたが、実はそれはアメリカが平和の名のもとに日本を抑えつけるための方便だったということが、だんだんと明らかになってきた。そういう中で、幣原外交に対する不信が広がっていったのである。

 結局のところ、協調とは聞こえがいいが、その実態は日英同盟の廃止をはじめ、問題だらけの外交でし...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
オスマン帝国とは何か~その繁栄と共生の秘密~
オスマン帝国とは何か?その繁栄の理由
山内昌之
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
織田家中一の武略者…『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の知られざる実像
黒田基樹
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
徳川家康の果断と深謀~指導者論と組織論(1)率先し陣頭指揮する
徳川家康の「天下泰平」デザインとは?…陣頭指揮とカリスマ性
片山杜秀
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
『江戸名所図会』で歩く東京~日本橋 (1)日本橋に見る徳川家康の手腕
徳川家康と江戸の町づくりー江戸時代の「日本橋」の姿とは
堀口茉純

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(39)上野誠先生の万葉集講義と現代
【10min解説】万葉集に学ぶ「公務員倫理法」の大失敗?
テンミニッツ・アカデミー編集部
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(6)ピョートル大帝の宗教改革
王座に乗った革命家・ピョートル大帝の「宗教改革」と、ソビエト時代のロシア正教の「弾圧」と「利用」の実情
上月豊久
「良き対話」とは?――哲学から考える(1)対話とは何か――会話・説教との違い
「良き対話」のヒントを哲学から考える…「対話」の大前提とは、そして「会話」「説教」「場回し」とは何が違うのか?
納富信留
昭和の名将・樋口季一郎…キスカ・占守島編(1)キスカ島撤退作戦
5200人の将兵を救え…米軍も称賛した「キスカ島撤退作戦」の奇跡
門田隆将
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳
『源氏物語』を味わう(3)形容詞からの楽しみ方
美しい形容詞の使い分け…『源氏物語』の表現を味わう
林望
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
ロシア「内政・経済・外交」の真実(1)国民の支持を意識するプーチン政治
ウクライナ侵攻も支持率対策か…プーチン政治の実態に迫る
上月豊久
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
「甘え」は現代においてダメなものなのか…名著『「甘え」の構造』への2種類の誤解とは?
與那覇潤
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎