本当のことがわかる昭和史《5》満洲事変と石原莞爾の蹉跌
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
当時の陸軍は全く統制を欠いていたと言わざるを得ない
本当のことがわかる昭和史《5》満洲事変と石原莞爾の蹉跌(9)参謀本部が止められなかったシナ事変
渡部昇一(上智大学名誉教授)
シナ事変は、参謀本部第一部長だった石原莞爾が反対していたにもかかわらず拡大していった戦いであった。当時の陸軍はまったく統制を欠いていたといわざるをえない。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第五章・第9回。※本項には該当映像がありません。
時間:9秒
収録日:2015年2月2日
追加日:2015年9月10日
≪全文≫
 昭和12年(1937)三月に参謀本部第一(作戦)部長になった石原は盧溝橋事件でも、第二次上海事変でも一貫して不拡大の方針を取り続けるが、やはり説得力がなかった。結局、石原は昭和12年9月に関東軍参謀副長に左遷され、 翌年には舞鶴要塞司令官、昭和14年(1939)には第十六師団長、そして昭和16年(1941)、予備役にされる。これは統制を重んずる東條陸相の意志だといわれる。

 ついでにもう一つ、歴史上の遺憾なことをいえば、日本軍が昭和12年12月13日に南京を落としたときのことである。参謀次長の多田駿中将は「寛大な条件で戦局の収拾を図るべきだ」と主張した。当時、参謀総長は閑院宮であり、多田は実質上、参謀本部の中心であった。その実戦の作戦の当事者が「やめたい」というのを近衛内閣は聞かなかった。第一章で見たように尾崎秀実らに影響された近衛内閣は、シナ側に誠意がないと強硬姿勢を崩さず、昭和13年(1938)1月16日に、「帝国政府は爾後国民政府を対手とせず」との政府声明が発表されるに至るのである。

 蔣介石の国民政府を相手にしないで戦争も何もあったものではない。これは近衛内閣の大きな失敗だった。シナ事変の継続を願ったのはスターリンであった。そして近衛のブレーンには左翼が多かったのである。

 何より私が問題だと思うのは、日本の参謀本部が政府を動かせなくなっていたことである。以前なら、作戦計画を立案する参謀本部が「戦争をやめたい」といえば、実際にやめることができた。だが、この肝腎のときには、それができなかったのだ。「戦争をやめる」という重要なことを決められないなら、作戦計画の立案など何の意味もない。それを決める力が失われていたことは、あまりに不可解極まりない。

 しかし考えてみれば、シナ事変は、参謀本部第一部長だった石原莞爾が反対していたにもかかわらず拡大していった戦いであった。とすれば、終わるときにも参謀本部に発言権がなかったといわれればそれまでだ。そこを含めて、当時の陸軍はまったく統制を欠いていたといわざるをえない。

 結果論からいえば、石原莞爾は満洲事変直後に統制違反で退役させて、貴族院議員にするか、どこかの大学教授にでもしておけばよかったのかもしれない。ああいう人物を軍隊に置いて出世させては危険である。満洲の一件はファインプレーだったかもしれないが...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
徳川家康の果断と深謀~指導者論と組織論(1)率先し陣頭指揮する
徳川家康の「天下泰平」デザインとは?…陣頭指揮とカリスマ性
片山杜秀
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
オスマン帝国とは何か~その繁栄と共生の秘密~
オスマン帝国とは何か?その繁栄の理由
山内昌之
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘

人気の講義ランキングTOP10
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(6)世界の英雄神話とその構造分析
知恵か腕力か?…オデュッセウス、スサノオ、アルジュナなど世界の英雄たちの栄光と悲劇
松村一男
編集部ラジオ2026(31)鶴見太郎先生の「公開収録」のご案内
【公開収録のご案内】鶴見太郎先生:ユダヤ人と世界史…その歴史の教訓とは
テンミニッツ・アカデミー編集部
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
Microsoft Copilot~AIで仕事はどう変わるか(1)「生成AI」の画期性
「生成AI」実装の衝撃…人工知能の歴史と特長
渡辺宣彦
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(2)ならず者国家・ローマ
サビニ人略奪に見られる初期ローマの「ならず者」的性格
本村凌二
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸