本当のことがわかる昭和史《5》満洲事変と石原莞爾の蹉跌
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
満州事変の立役者も「そのこと」は分かっていた
本当のことがわかる昭和史《5》満洲事変と石原莞爾の蹉跌(8)なぜ満洲国のみで自重できなかったか
歴史と社会
渡部昇一(上智大学名誉教授)
満洲国の建国に対して、これを認める国が最終的には23カ国にも上った。この流れをさらに引き寄せるためにも、日本はもう少し我慢して、万里の長城の外側、つまり満洲国のみで自重するべきだった。石原莞爾自身も、そのことはわかっていた。しかし、時代は思う通りにはならない。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第五章・第8回。※本項には該当映像がありません。
時間:9秒
収録日:2015年2月2日
追加日:2015年9月10日
≪全文≫
 この流れをさらに引き寄せるためにも、日本はもう少し我慢して、万里の長城の外側、つまり満洲国のみで自重するべきだったと私は思う。

 ところが三月事件以来のクーデター事件を見ても、陸軍は身内を罰することには消極的で、ようやく首謀者たちを厳罰に処したのは二・二六事件で天皇陛下の怒りに触れてからである。満洲事変で功績を上げた人はなおさら罰するわけがなく、そのチャンピオンともいえる存在が、石原莞爾にほかならなった。

 石原莞爾は、満洲事変のあと、どんどん出世していった。たしかに、満洲事変で勝利を収め、満洲国の建国を推進したのは大きな功績ではあった。二・二六事件にも反対で、皇道派でもなかったから、その点もよかったのかもしれない。

 しかし、当時の幣原外交がいかに悪かったとはいえ、石原の行動が憲政の本義に外れていたことは否定できない事実であり、また、軍の統制を乱していたことも間違いない。そういう人物を現職に置き続けたことで、軍中央はかえって出先の部隊を抑える力を失ったのである。

 軍においても政府においても、やはり統制が重要である。統制が利かなくなれば急進派の暴走は止められない。三月事件以降、軍部でクーデターが頻発したが、それは軍の統制を乱した者たちを罰してこなかったことの結果である。二・二六事件でようやく首謀者たちを、死刑をはじめとする厳罰に処したが、あまりにも遅きに失していた。

 満洲についても同じだ。最終的にはシナ人も、万里の長城の向こう側にある満洲まではなんとか我慢したと思う。だが、万里の長城の内側に自治政府をつくろうというのは無理な話だ。

 石原莞爾自身も、そのことはわかっていた。たしかに彼も満洲事変の頃までは、シナ本土への進出も視野に入れていたふしがあった。だがソ連が軍事的にも政治謀略的にも満洲・シナ方面に積極的に乗り出してきている情勢を受けて、考えを変えていく。対ソ戦略を考える場合、英米と敵対関係になったら絶対に不利になる。しかし、もし日本がシナ本土に手を伸ばしたら、シナに多大な関心を抱いている英米両国は必然的に敵となってしまう。それは避けねばならないと考えたのである。また、シナで国民党政権による統一政策が軌道に乗り始めていること、反日的気運がさらに上昇しつつあることなどを受けて、むしろ石原はアジアの諸国を糾合する「東亜連盟」的な構想を抱く...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
イスラエルの歴史、民族の離散と迫害(1)前編
古代イスラエルの歴史…メサイア信仰とユダヤ人の離散
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
世界のジョーク集で考える笑いの手法と精神(1)体制を笑うジョークと諷刺の精神
ジョークの精神…なぜ人は厳しいときほど笑いを磨くのか
早坂隆
未来を知るための宇宙開発の歴史(12)宇宙推進技術はどこまで進化したか
水平離着陸で宇宙へ、近未来のロケット像と進む技術開発
川口淳一郎
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
クーデターの条件~台湾を事例に考える(4)クーデター後の民政移管とその方策
軍政から民政へ、なぜ李登輝はこの難業に成功したのか
上杉勇司
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(1)定年制は要らない
仕事をするのに「年齢」は関係ない…不幸を招く定年型思考
出口治明