『オデュッセイア』は現代の作品にどのような影響を与えているか。女神の誘惑や守護神の存在構造、逆ハーレム的な物語類型など、現代のライトノベルやゲームに息づく『オデュッセイア』的なモチーフを具体例とともに解説する最終話。さらに、単なる情報の伝達ではなく言葉で紡がれる「物語」こそが、人類の結束や心に動力を与える不可欠なコミュニケーション手段であることを提示。古代の物語構造を知ることで、現代の表現や創作の源流と価値を再発見することができるのだ。(全9話中第9話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
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●現代のライトノベルと『オデュッセイア』の共通性と影響
―― 講義の冒頭で、ライトノベルなど、要するに今の日本の小説とか、あるいはゲームなどについても、(『オデュッセイア』の)影響というか、沖田先生はそれが「知らず知らずのうちに似てしまったのかもしれない」というお話をされていましたけれど、ぜひその辺りのお話もお伺いしたいと思います。
まずその前提として、ライトノベルとはどういうものかを教えていただきたいんですけれど。
沖田 そうですね。少年少女向けに書かれている小説で、ファンタジーの世界が前提になっているものが多いのですが、そういった少年少女向けの読みやすい小説の中で、特に最近人気になっているのは、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』という長いタイトルの(作品)です。
通称“ダンまち”と呼ばれているのですけれど、最近の小説(作品)はタイトルが長いことが多いのですけれど、この作品の中で私が『オデュッセイア』に似ているなと思ったのは、キルケやカリュプソのところでオデュッセウスが女神的な存在に誘惑されて、しばらくの時を過ごすというモチーフです。
それが“ダンまち”の中では、女神フレイヤに主人公のベルという男の子が熱烈に愛されるのですが、ベルはそのフレイヤの愛を望んでいないのです。(つまり)フレイヤの一方的な愛でベルが翻弄されるという話になっていて、そこがまず似ているというのと、それだけではなく、そのベルを守護しているのが女神ヘスティアなのですが、ヘスティアはギリシアの女神で、ギリシアに3人いることになっている処女神のうちの1人です。
3人の処女神は誰かというと、アルテミスと『オデュッセイア』に出てくるアテナ、もう1人がヘスティアです。なので、その3人の処女神といわれているものの1人がオデュッセウスの守護神であり、もう1人のヘスティアが現代の物語の中でベルの守護神となっているということです。
そういった中で、「処女神」と「豊穣女神というか美女神(魅惑の女神)」の対立構造が“ダンまち”の中でも繰り返されていることがすごく大きな特徴です。
それから、“ダンまち”だけではなく、最初のほうで少し触れましたけれど、ゲームの『FGO(Fate/Grand Order)』では、行って帰ってくるという物語になっています。地球の危機を救うために、過去のある時点、ある場所に...