『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
英雄たちの「特別な武器」と「喪失」…悲劇かハッピーエンドか、そのメッセージの秘密
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(7)英雄と武器と喪失と家族
各国の神話や叙事詩において、英雄と武器は一心同体であり、武器を手放すことが英雄の死や最期を決定づけるという共通の認識が示される。こうした物語の背景とは、いかなるものなのだろうか。また、多くの英雄神話で「喪失」が描かれるが、その一方で、そのような悲劇的な結末とは対照的に、『オデュッセイア』のように知恵を駆使して家族のもとへ帰還するサクセスストーリーも存在する。第7話では、武器を手放す喪失の概念や、多様な家族像を通して、神話に描かれる英雄像の多様性を比較・考察し、私たちが生きていく上でのモデルとしての神話の豊かさとその魅力を解き明かす。(全9話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:10分53秒
収録日:2026年7月27日
追加日:2026年9月18日
≪全文≫

●英雄と武器は一心同体、そして死に際しては分かれる


―― (沖田先生に)もう一つお聞きしたいことがあります。先ほど文明の道具としての「弓」の意義(についてのお話)がありましたけれど、英雄神話を語る上で、いわゆるそれぞれが持つ武器ですね。松村先生からもヤマトタケルの剣の話がございました。武器と英雄の組み合わせ――良いペアですよね――がどうなっていくかが非常に重要な物語(の鍵になるというか)、どうやってそれを見つけるか、また、それをどう手放すことになってしまうのかはすごく興味深いところだと思うのですが、そのあたりはいかがですか。

沖田 アルジュナと弓には強い結びつきがあって、「ガーンディーヴァ」という名前がついている弓です。この弓の所有者は「ヴァルナ」という水の神なのですけれど、このヴァルナがアグニという火の神に(弓を)貸して、そのアグニがそれをアルジュナに与えたのです。

 アルジュナは『マハーバーラタ』の物語の最後に死んでいくので、死への旅に出かけるのですけれど、その旅に出かけるときにガーンディーヴァの弓を海に投じて、ヴァルナ神に返しているのです。つまり、一心同体でずっと一緒に戦ってきた弓を手放すことが英雄の最期を印象づけていると思います。

 そうすると、先ほど松村先生からお話がありましたヤマトタケルも、剣を置いて伊吹山の神に戦いに行っているということで、やはり武器と離れたことが死につながります。そこに共通点が見いだされるんじゃないかと思います。あとはアーサー王ですね。死のときに「エクスカリバー」ですね。剣ですけれど。

―― 名剣ですよね。

沖田 はい。これを湖に返して、それからアヴァロン島に旅立っていくということになっています。(ですから)英雄と武器が一心同体であって、死ぬときにはそれを手放すという、共通した英雄伝承の認識があるのではないかと思います。

―― このあたり、松村先生はいかがですか。

松村 だから、英雄の叙事詩が作られる背景として、誰かがスポンサーにならないとその話はできない。詩人も無償でやるわけにいかない。(つまり)食べなければいけない。そうすると、英雄叙事詩のパトロンは誰かというと、私は戦士層の貴族だと思うのです。

 そういう人たちが、農民とか牧畜民とか漁民とか、そういう人たちを支配している。自分たちは、つまり普通の人間とは違う、よ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留
日本人が知らない自由主義の歴史~後編(1)ニューリベラリズムへの異議
ハーバート・スペンサーとダイシー…20世紀の危機の予言者
柿埜真吾
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(1)AIに置き換わる仕事と人間がやる仕事
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か…人間がやるべきこととは?
橋爪大三郎
「怒り」の仕組みと感情のコントロール(1)「キレる高齢者」の正体
「キレやすい」の正体とは?…ヒトの「怒り」の本質に迫る
川合伸幸

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(35)鶴見太郎先生の公開収録を振り返る
【10min紹介】鶴見太郎先生の公開収録を振り返る・・・お寄せいただいた声
テンミニッツ・アカデミー編集部
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
「満洲」から考える日本とアジア(8)日貨排斥と満洲事変の原因
なぜ満洲事変が起きたか…激烈な日本排斥と朝鮮人迫害、さらに一方的な条約無効化に直面した日本人の決断と失敗
宮脇淳子
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
50代からの親の介護~その課題と準備(2)マネジメントとしての介護
介護を「プロジェクト」と捉え、マネジャーに徹すべし
太田差惠子
現在の宇宙の姿(2)太陽系から星の世界へ
太陽系とその外に広がる星の世界との関係
岡村定矩
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(1)老年病科と高齢者の疾患・病態の特徴
頻尿、低栄養、転倒、誤嚥、フレイル…増える老年症候群と高齢者の疾患・病態の特徴
小川純人
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(1)史上最大の問題作
全米TOP10大学の必読書1位が『ポリテイア(国家)』
納富信留
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫