『オデュッセイア』の主人公オデュッセウスはトロイ戦争からの帰路、故郷のイタケに戻るまでどのような冒険を重ねたのか。トロイを後にしたオデュッセウスは仕込んでおいたブドウ酒で一つ目の巨人ポリュペモスをやっつけるが、その後、その父である海の神ポセイドンの怒りを買ってしまう。また、魔女キルケの助言による冥界下りや、美しい女神カリュプソによる7年間の幽閉など、過酷な試練に見舞われながらも、知恵と守護神アテナの加護によって乗り越えていく。緻密に構成された20年におよぶ壮大な冒険譚の全体像を分かりやすくひも解き、古代神話の奥深いロマンとドラマへと視聴者を誘う。(全9話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
≪全文≫
●大量に仕込んだワインは一つ目の巨人ポリュペモス退治の伏線
―― そうしましたら、『オデュッセイア』の物語がどういうようなものか、特に冒険の部分がどういうものかということをお聞きしたいと思います。先ほど「構造」のお話もございましたが、実は単に話がつながっているだけではなくて……。
松村 仕組んでいるのです。これについて、資料を元にお話をさせていただこうと思います。
このような資料です。1番から15番まで番号が振ってありますが、1番が戦争が終わったトロイです。最後の15番が故郷、(つまり)先ほど言いましたが、オデュッセウスが20年前に出発したイタケという故郷です。その間にいろいろと不思議なところに行くのです。
まずトロイを出た後に、「キコネス人」という人たちのところに行きます。ここは現実に地名が残っていて、「トラキア」という地域だったということになっているのですが、ここで何が大事かというと、大量にブドウ酒を仕込んでいる。このブドウ酒が、先ほど言いましたポリュペモスという人喰いの一つ目の巨人を後でやっつけるときに、どうしても必要になってくるのです。だから、あらかじめここで仕込んでいるのです。
その次は、「ロトパゴス人」という人たち(のいるところ)です。ロトスは英語で「ロータス(Lotus)」といって、蓮のことです。これは現実の植物ですが、この神話の中では不思議な食べ物になっていて、これを食べると全て忘れてしまう。ハッピーな気持ちになって、それまでのことを全て忘れてしまって、故郷に帰る気持ちをなくさせてしまう。だからある種、オデュッセウスにとってはとても危険なものなのですね。オデュッセウスはそのことを理解して、仲間たちがこの島にずっととどまらないように無理矢理ここから連れ出します。
その次、4番目は、先ほど申し上げましたが、人喰い巨人の「キュクロプス」といわれている中の一人のポリュペモスの洞窟に入った話です。
●アイオロスの島の危険な風とアイアイエ島の魔女キルケ
松村 その次は、「アイオロスの島」という風の神の島です。最初は風の神にすごく仲良くしてもらい、無事に航海するために危険な風を全部閉じ込めた袋をもらって、故郷のすぐそばまで行くのですが、オデュッセウスはここで油断するんですね。どうしたかというと、もう故郷...