古代ギリシアの叙事詩『オデュッセイア』は、現代に至るまでさまざまな物語創造の源泉となっている。たとえば、実はSF小説・SF映画の名作『2001年宇宙の旅』には、『2001: a space odyssey』という原題からも想像されるように、『オデュッセイア』からのイマジネーションが巧みに盛り込まれている。それは、どのような部分に表われているのだろうか。また、人気ゲーム『Fate/Grand Order』にも、インドの『マハーバーラタ』に登場する英雄異父兄弟の宿命が投射されている。神話の「構造」を受け継ぎつつ独自の変容を遂げた作品は、とても数多く存在しているのである。(全9話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
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●『2001年宇宙の旅』に込められた秘密
―― 『オデュッセイア』の話について、先ほどあらすじをご紹介いただいたのですが、それが現代の作品にもいろいろと影響を与えているというところで、このご本(「『オデュッセイア』入門」)の中で印象深いのは『2001年宇宙の旅』についてですね。
松村 そうですね。後ほどオデュッセウスとその一行がどのような冒険をして、どのような怪物に出会ったかということを、もう少し秩序立てて構造的にご紹介したいと思うのですが、その中で最もよく知られているのは、人喰いの一つ目の巨人であるポリュペモスの洞窟に閉じ込められてしまうという話です。
洞窟に(いるのが)巨人ですから、入り口に大きな石を置いてしまう。そうすると、人間の力が何人合わさっても、これを取り除くことができない。(その巨人は)人喰いですから、その洞窟で見つかると、次々に生きたまま食われていってしまう。そこで、いかにしてこの洞窟から脱出するかというのが、『オデュッセイア』の中の一つの見せどころです。
その後も世界中のさまざまな作品に影響を与えているのですけれど、その影響の一つが今ご紹介いただいた『2001年宇宙の旅』です。その中では、宇宙船に何人かの乗組員がいて、船長はボーマン(Bowman)という人です。「Bowman」は英語でどういう意味かというと、一つは「船乗り」です。だから、まさに宇宙を旅する船長に相応しい名前なのですが、もう1つ、「Bow」という言葉と「Man」という言葉を切り離すことができるのです。Bowは何かというと、弓です。後でご紹介するようにオデュッセウスは弓の英雄なんですね。
どんな武器が一番得意かというと、いろいろなものが英雄の武器としてあるのですけれど、Bowmanという名前はオデュッセウスとのつながりを感じさせるし、それから『2001年宇宙の旅』のもともとのタイトルは『2001: a space odyssey』というのです。宇宙のオデュッセイアということで、2001年にこういう宇宙の旅をするだろうということで書かれている作品なのです。
その中で――今はもうすでにコンピュータは当たり前ですが――宇宙船を制御するコンピュータが出てきます。これが「ハル(HAL)」という名前なのですが、HALはあらゆるものを見るための大きな目を持っているんですね。この目が赤いのです。
映画を見た方はご存じだと思うのですが、このコンピュ...