古くから語り継がれるギリシア神話の金字塔『オデュッセイア』は、世界各地の物語に絶大な影響を与えてきた。酒で酔わせて目をつぶす怪物退治の趣向は『アラビアンナイト』のシンドバッドの冒険に通じ、変装や帰還の要素は日本の『百合若物語』やアジアの伝承にも見られる。近代以降も『ロビンソン・クルーソー』や『ガリバー旅行記』といった冒険譚の骨格となり、アイルランド出身の小説家ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』や映画『ひまわり』のように、翻案や裏返しの表現として多様な変容を遂げた。第8話では、無数の創作の原型となった『オデュッセイア』の世界的影響とその奥深い魅力をひも解く。(全9話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
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●アラブや日本の物語にも見られる『オデュッセイア』の影響
―― 今までずっと神話のお話を伺ってまいりました。ずっと聞いておりますと、いろいろな物語の原型といいますか、フォーマットといいますか、(そうしたものが)もうできているなと。ある種これに当てはめていくことで、いろいろな物語も作られていきますし、そのバリエーションで豊かになるというところもあると思い、本当に興味深く感じました。
先ほど冒頭のお話のところで、『2001年宇宙の旅』は未来の話だけれど、実は本当に(『オデュッセイア』を)なぞるような形で(作られた)というお話もいただきましたが、先生のご本(「『オデュッセイア』入門」)の中で、いろいろな物語が実は影響を受けているというお話がございました。その辺りについて教えていただいてもよろしいですか。
松村 だから、あらゆる世代に一番アピールするのは、先ほども『2001年宇宙の旅』のところでも少し(話が)出てきましたけれど、「怪物を退治する」(というところで)、そのときに「目をつぶす」というものがありました。もう1つは、先ほどのスサノオがヤマタノオロチを退治するときもそうですし、オデュッセウスと仲間たちがポリュペーモスを退治するときもそうだけれど、お酒で酔わせて相手を無力化するというものです。この2つです。ポリュペーモスの話はこの2つが両方ともあるのです。(お酒で)酔わせて、目をつぶすということです。
これは人気があって、皆さん(ご存じの)『千一夜物語』とか『アラビアンナイト』といわれている、大きな物語を集めたものがアラブの文化圏にありますけれど、あの中で「シンドバッド」という英雄がアリババと並んで、よく知られている人だと思います。
このシンドバッドは航海する「海の商人」です。あちらこちら知らない土地に行って商品を買い付けて、バグダッドに戻ってきて大儲けをしてお金持ちになるということで、それを何回も繰り返すのですが、さまざまな不思議で危険な島に行くというのが全部で7回繰り返されていて、「シンドバッド7つの航海」というようなタイトルになっているけれど、その中でも「人食い」のところが出てくるのですね。(そこで人食いの)目をつぶして、そこから免れるという話がありますし、お酒を飲ませて酔っ払わせて、眠らせて退治するという話もあるのです。
つまり、この『オデュッセ...