●低投票率だった2015年統一地方選前半戦
統一地方選の前半の結果を分析してみます。特徴の一つは、投票率が低かったことです。これは関心が低かったということもあるし、盛り上がりに欠けたことも原因です。結果的に、知事などは、現職が勝ったケースが多く、現状維持的な側面が強いと言えます。
自民党は、相変わらずそこそこの結果を出しました。共産党も、割と議席が取れました。これは現政権、すなわち安倍政権批判の受け皿として、自分たちの存在感を示すという共産党の手法の結果です。民主党などと同じ野党ですが、政権獲得は関係ないけれども現政権に対抗し批判するという野党としての役割ですね。
それに引き換え、民主党は相変わらず議席が伸びませんでした。もともと民主党は、あまり地方選挙には強くないのですが、それでもその議席がさらに減り、あるいは伸びなかったのは、かなり深刻な問題です。果たしてこれが底打ちなのか、あるいはまだ下がるのかという論争がありますが、民主党におけるローカルモデル、すなわち地方選挙のモデルというのは、本当にあるのだろうか? というのが、今回の選挙で気が付いたことです。
●地方政治で改革すべきは選挙制度だ
それに関連して言いますと、地方選挙については、その選挙制度にもっと注目をすべきだというのが私の意見です。これは前から主張していることです。首長、すなわち知事や市長は一人区ですから、これは小選挙区で分かりやすいのですが、県会議員レベルになりますと、人口が多い所は中選挙区ですが、例えば郡部など少ない所は一人区であり、制度が混在しています。この混在した制度が、一つの問題になります。もう一つは、市会議員選挙です。こちらは全市一区でありながら、有権者は一人一票です。ですから、個人選挙の性格が非常に強くなるのです。
日本の地方政治の改革をしなければならない場合、どこからスタートすべきかというと、実は、この地方議会選挙の選挙制度を変えることが非常に重要です。しかし地方を語るときには、そのほとんどが行政上の問題や、大阪都構想のような政令指定都市の二重行政問題といった話が中心です。道州制の話でも、選挙制度をどうするのかということはあまり議論されないのです。
しかし実は、この選挙制度が改革の中心であるべきです。地方選挙を今の制度で続けている限り、個人選挙や無所属候補は続くと思います。そうなると、衆議院・参議院共にそうなのですが、それに乗る国会議員が出てくるのです。かつての日本の政治は、国会議員が保守系無所属的な個人選挙に乗っていたモデルでした。しかしそこから、国会議員の方、特に衆議院は、曲がりなりにも政党あるいはマニフェストに則るフランチャイズ型になりました。国会議員は、酒屋米屋モデル、個人商店型からフランチャイズ型に転換したのだと思います。
ところが、地方政治、地方選挙は、相変わらず個人選挙です。党や会派はほとんど関係なくなり、個人が自分で顧客である有権者を開拓して、自分で勝手に政策を訴えるスタイルです。そういう意味で言うと、選ぶ方から見れば、知り合いであったり、あるいは頻繁に顔を出してくれていたりする人であるかが、投票の判断基準になってしまいます。だからこそ地方政治を語る場合、行政上の問題というよりも、議会をどうするか、その議会を基本的に形づくる選挙制度をどうすべきかというところに、実は切り込む必要があると思います。市町村合併によって議員総数は減り、同時にそれは自民党の支持基盤を揺るがせましたが、今ではそれも少し収まってきたのではないかというように思います。
●自民党の地方創生と野党の対抗策
もう一つ政策面で言いますと、今回の自民党は地方創生を訴えました。とはいえ、これはもう分かりきったことでもありました。自民党は今回の統一地方選目当てに地方創生を唱えましたが、これは従来の政策と同じようなところもあるし、新しいアイデアである部分もあります。地方創生でいろいろなアイデアをくみ取ろう、といったことをタイミングよくぶつけてきました。アベノミクスは中央の話で、地方にまでその恩恵は及んでいないという批判は、野党から当然出てきたはずです。それに対して、自民党は地方創生で十分に手を打っています、というメッセージを送りました。その1年くらいの戦略がきちんとできていたのです。あるいは、地方消滅や都市消滅と言ってお尻に火をつけ、危機感をあおるということが有効に作用していたのです。
それに対抗するアイデアが、野党に準備されていたのだろうかと思います。例えば、アベノミクスの恩恵は地方に及んでないと言いますが、それはすでに皆が言ってきた話なのです。地域格差や所得格差、資産格差といった格差の問題をぶつけるのはいいけれども、トマ・ピ...